Side-Pressを超えるSide-Pressを求めて・・・・・
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 ラボ近況報告 新製品 Side-Press HS/RBモデルの開発レポート  2009.3.18

Side-PressHSモデルをベースにした新型スタンド Side-PressHS/RBモデルの開発状況のご紹介です。

約半年間ほどかけて行ってきた新型スタンドの開発は、デザインの向上を基本テーマとした開発でした。

Side-Pressスタンドの機能を最大限に高めたFAPSの標準スタンド、HSモデルの音を維持しつつ、
もう少し柔らかいデザインのSide-Pressスタンドを提供することが当初の目的でした。

3本の縦支柱とT型フレームを使用したSide-Press構造については、過去の経験からHSモデルの形状・寸法が最適であり、
変更の余地がないほどに煮詰めてきたものです。
そのためベース部のデザイン見直しを中心に行いました。

試作過程では、HS用ベースのコーナー仕上げ形状の変更や大きく角を落としたイメージの8角形ベースの試作を行いました。
しかし角柱を素材にしたものは、デザインの可能性に限界があり、柔らかいデザインにはほど遠いものでした。

スタンドの製造委託先の協力も得て、手法の検討を行った結果、YAGレーザーを使った肉厚鋼板切り抜き技術が候補に挙がり、
実際に図面を起こし、ベースプレートの開発・試作を行いました。

質量の軽減を目的に薄い鋼板を採用したものは、スパイクを足で刺そうとした場合に変形してしまう等の剛性不足が問題になりました。
レーザー装置の切断能力との兼ね合いも含め、最適サイズを見出すための試作を行いました。

こうした試行錯誤の結果生まれたのが、今回ご紹介させていただくRBモデル(Round Base Model)です。

HSモデルと同等の音であり、デザインが良くなれば・・・という安易な発想は、試作スタンド3号機の音を聞いた途端に吹き飛びました。
明らかに音が違うのです。
材質・構造・寸法・質量が違うのですから、音が変わるのは当然としても、ちょっと困った方向に変わりました。


左 HSモデル  右:HS/RBモデル試作3号機

その音は、恐ろしいほどのリアルな音でした。聞けば聞くほどに余計な音は何も入っていないと思わせる音。
その印象を親しい友人にメールしたのですが・・・こんなことを書いていました。

「これは究極の本当に余計な仕事を何もしないスタンドでした。低音が出るとか高音が響くなんてこととは無関係の音です。
リアルそのもの。声楽やソロ演奏を聞いているとゾクゾクしてきます。

 ある程度の音量にしてという条件付きですが、従来のSide-Pressも含めて、
ほかのスタンドに乗せるとそのスタンド特有の音が乗ってくるのが明確に判別できます。
いかにスタンドが再生音質に影響しているかを実感できます。

スピーカーは当然としてシステム全体の音が丸裸にされてしまうという印象です。
スピーカーが見えなくなるのは、当然のことですが恐ろしいほどの定位力とリアルすぎるほどの音です。

爆発音的な盛り上がりの音楽も綺麗に抜けるように爆発してくれます。解像度も従来品を超えています。
耳が肥えた人ほどその凄さを直感できると思います。

滅多に聞こうとしない女房も聞きいって、この音は凄い! ものすごいリアル! と驚いておりました。

しかし、 逆に経験不足の初心者クラスの人は、そっけない音、痩せた音と思うかもしれません。
実際、鳴りの大きな他のスタンドと比較すれば、そうとも言えますから間違えではないですけど(笑)  」

毎日新スタンドの音を聞きながら、長い期間悩みました。
Side-Pressの音を知っているユーザなら、聞きこむほどにこの素晴らしさは、良くわかるはず。

しかし鳴って響きが乗って当たり前のスタンドに乗った音しか聞いていない人が聞いたら・・・

あまりに素っ気ない音に「なんだー、こんな音か。」そういう反応が出ることが予想されたのです。
びっくりするような派手な効果は、まったくありません。

その良さは、自宅で落ち着いて自分の好きな曲を聞いて初めて分かるのです。
おやっ・・・?  あれ・・・?  これは・・!  なんだこの音は!!!
この過程を体感してから、他の曲を聞けばその素晴らしさがビシビシと伝わってくるのです。

これを不用意に売るとSide−Pressスタンドそのもののイメージを誤解されてしまう恐れがある。
正直にそう思いました。

もう少し色を付けるしかないのか・・・・・
そもそも軽薄細長が基本概念の設計に無垢材の重いベースを採用すること自体が色付けだし・・・。

いずれにしてもHSモデルと同じ音にはならないのであれば、もっと強い魅力のある音に・・・・
スタンド鳴きの影響が出ない色付けのないスタンドがウリなのに・・・色付けか・・・・苦笑でした。

相当期間自分で聞きこんで決めました。
とりあえずこのままお客様に聞いてもらおう、忌憚のない意見をもらおう・・・と考えました。
とある日、お客様宅にスタンド、アンプ、スピーカー等のFAPS機材一式を持ち込み、試聴会を行いました。

価格comで様々な話題を提供頂いているお二方、A様とO様と特別ゲストのH氏が参加くださいました。
皆さんもちろん非常に超えた耳をお持ちですが、先のお二人は、Side-Pressスタンドを骨の髄までしゃぶりつくしている恐ろしい方たちです。

同じ音源、アンプ、スピーカーで2組のシステムを構成し、スタンドだけを変えて比較試聴しました。


HS/RB試作3号機のT様宅における比較試聴の様子

先に述べた私の感想と類似の意見以外に忌憚のない沢山のご意見をいただきました。

・兎に角、腰下の透明度が良くなる
ウッドベースのリアルさは抜群
従来型が江ノ島の海中に対しラウンドタイプは、カリブ海の限りなく透明に近い海中を彷徨う感じ…
腰上の音像がかなり高い。音場が上下方向に広がる、と言うのとはちょっと別なニュアンス
下半分のヌケが猛烈に良くなった分、音像全体、トータルとしての音のまとまりに一抹の違和感を感じざるを得ない…
・従来型のまとまりで、あの腰下の「くすみ」が取れたら最高
・極端な言い方をすれば、腰付近に空洞があるような感じ

その中で私が非常に気になった意見は、「腰付近に空洞があるような感じ」というコメントでした。
これが押しの強さ的な要素を減じているのかもしれないと思ったのです。

そういうことを意識して聞き直してみると、なるほどそう言う傾向が感じられる。
広く広がった音場に感心してしまい、薄くなった音場領域があるのを聞き逃していた未熟な自分がいたわけです。
これは直す必要があるな・・・と、その原因を探りました。

最初は、ベースの質量の影響を疑ったのですが、原因は意外なところにありました。



ここでは詳細は書きませんが(企業秘密・・笑)、支柱を叩いた時に出る音のわずかな差が突破口になりました。
Side-Pressは、3本の縦支柱が盛大に振動することによりスピーカーの振動を吸収発散させていますが、それを阻害する要因を発見したのです。

それをしっかりと対策し、その他の見直しを行ったものが現在評価中の最終試作品、これがほとんどそのまま市販のRBモデルとなります。


HS/RB試作3号機(左側) & 4号機 (右側:支柱・ベースの形状・寸法等をチューニングしたもの。RBモデル原型)
似たような外観ですが、実は寸法も支柱の位置関係も異なっています。

参考:試作3号機は、他の試作機と同様にFAPSの資材置き棚の脚として余生を送っています。

HSとHS/RBの違い

サイズは、最終的にHSモデルより少し大きくなりました。
しかし丸いベース(RB ラウンドベース)デザインの効果でHSモデルよりも小さく見えます。

定位感や音場表現は基本的にHSモデルの流れを汲んでいます。

●HSモデルは、全域に渡ってバランスがとれ、圧倒的な空間表現と癖のない自然かつ繊細な音質が特徴です。
 HS/RBよりも音楽的な雰囲気は多めとも言えます。
 FAPSでは、HSがSide-Pressの正統派と言えると思っています。

HS/RBモデルは、一体型ベースの効果(影響)が強く出て、全体的に音の芯が強くて押し出し感があります。
  重圧でありながらも切れの良い低音も特徴です。
 
 自然で豊かな響きのHSよりもやや緊張感のある(緊張感を強いられる)音とも言えます。


継続して手持ちスピーカーを総動員して試聴テストを行っていますが、その中で、ぜひここで報告したいことがあります。

B&W N805の復権!?

キンキンするような強い高音が嫌という方が多い805、
最近導入した新スピーカーに比べると確かに音の甲高さと輪郭の甘さが気になり、実は私自身も半ば見捨てていたというか、
ほとんど使っていなかったB&Wノーチラス805が、驚くべき変身を遂げたのです。

もっと高音が出ればいいのに・・・・・・
高音がうるさいと言われがちな805に対し、そこまで思わせるような凄まじいまでの低音と音の太さです。

音のバランスがまるで良い方向に変わっただけではなく、トールボーイ以上と思わせる大迫力です。
曲種によっては、真剣勝負でけんか腰、暴れん坊的な音のSONICSアニマがお上品に聞こえるほど。
805がこんな音を出せるなんて・・・・ 正直に驚きました。

HS/RBの構造・動作メカニズムと805の球形軸受け&重心支持、それにHSの自重受け多穴構造が効を奏したようです。
ほぼ重心位置にある側面支持点の直下に近い点で球形軸受けをセットできるのです。

ちなみにHS/RBモデルの上部構造はHSモデルと完全共用です。 

HSの中空&無垢ハイブリッドベースは、縦支柱と同じ共振状態となっていますが、HS/RBは、振動はするものの明らかに縦支柱とは別で微振動と言った感じです。
レーザー切り抜きの一体型RBベースは、仮想大地的に作用していました。

強固な大地に建てられた3本の支柱がスピーカーを保持するイメージとなります。
スピーカーの振動は、縦支柱だけで吸収するしかないのですが、下はリジットに固定されているため、
共振周波数がHSより高くなり、それが音に影響して芯の強さと低域の明瞭度向上に寄与しています。

少し出過ぎではと感じるほど強力で分厚い低音は、床の影響も受けやすいようです。
恐らくスパイク下のチューニングが、RBの使いこなしポイントの一つになるでしょう。

新型スタンド2種類をテスト中のFAPS試聴室の様子。(2009年3月18日)

気になるお値段は? 何とかHSと同じ7万円台にギリギリ収まりそうです。収めます。

(HS/RBモデルは、2009年4月発売を開始しました。)