Side-Pressを超えるSide-Pressを求めて・・・・・
Side−Pressスタンド ロング押し座のテストレポート 2009.9.28
標準幅のSide-Pressスピーカースタンドで幅の狭いスピーカーを使用する場合は、Type35の押し座に延長用ナットを併用してセットしておりました。
ボルトの長い押し座があれば、直接押すことも出来るわけですが、残念ながらできませんでした。
この押し座のボルトは、押し座内部部分、ナット形状部分、ボルト部分を一体成型した特殊なものなのです。
このため、ボルト長は最大60mmしか作れないため、延長用の長ナットを併用して押し座の延長を行っております。
しかし、スピーカーの振動を素直な形でスタンドに伝えるためには、スピーカーとスタンドの間の接点数は少ない方が理屈上も好ましい訳です。
このことが特に気になっていたお客様から、ロングボルトの製作可否の打診がございました。
今回のレポートは、その辺からスタートします。
後日談となりますが、実はここで行った今回の試行と改良の結果が、新型の側面押し座の製造に結びつきました。
先日作って頂いた、10cmのロング側面押し座を使用してみましたので早速レポートさせていただきます。
小型スピーカー使用時に自重受け部の高さを大きくするハイポジションセットが有効である事。
また、自重受け点をスピーカー底面の重心に近付ける事でサイドプレスの高い空間表現力を更に高める事が判りました。
そこから、更に高い解像度・空間表現を実現するのに何が出来るだろう?
そう考えていくと、側面押し座部分が次の照準として浮かんできました
それは、自重受け改善の中で、質量の高い延長ナットの使用を止め
スパイクで直接受けて、振動を床へ効率よく伝達する事は大きな効果が有る
ならば、幅の狭いスピーカー使用時、側面押し座部に使用している延長ナットも使用しなければ,同様な改善効果が有るのではないか?
と言う発想で無理をお願いした次第です。
※FAPS注記 今回のロング押し座は、標準押し座のナット部分でボルト部を切断し、そこに100mmのボルトを溶接、塗装したものです。
普通のスプレー塗装のため、使用により塗装が剥げてしまいました。ボルトの直角を出すのも困難で、傾いてしまうこともあります。
結論から申しますと、大正解でした
使用したスピーカーは、「パイオニア・ピュアモルトVP」です。
このスピーカーはFAPSさんでも使用されてご存知の通り、滑らかな中域・優しい音質・高い空間再現力が魅力ですが
若干低域にボン付き感があり、メインスピーカーをPMCにしてからどうも登場する機会が減っていました。
側面延長ナットを使用せざるを得ないサイズですので今回の目論見にうってつけと思い、早速ロング押し座でセット。
自重受けは、これも無理をお願いして作って頂いた22cmロングスパイクです。
LRを従来の延長ナット式と、ロング押し座夫々でセットし、1本ずつ音質を比較して見ましたところ、発音の瞬間から激変している事が感じられます。
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左: 延長ナット使用 右:特注ロングボルト、座を使用 |
左 :標準の延長方式 右 :特注ロング座 |
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左:オプション延長ボルト&接続ナット使用 右:特注ロングボルトを使用 |
左: 延長ナット使用 右:特注ロング押し座使用 |
結果
1・低域がぐっと締り、更にどっしりとしたベース楽器が確認できました。
2・モノラルで聴いても、音が前へぐんぐん飛び出してくる事が判ります。
3・VPでは諦めていた高音部の伸びが素晴しく良くなっています。
当初、1本ずつをじっくり聴かないと差が判り難いだろうと思っていましたが、もうそういう次元ではありません。
すぐさま左右ロング押し座に換えて、どんどん聴き進めてしまいました。
HS/RBスタンドの床ベースをギリギリまで低くし、自重受けロングスパイクを出来る限り直角になるよう固定。
スピーカー底面のスパイク受け部にマグネシウムの小片を挟むなどなど…
幾つかの調整を経て、一応納得のいく状態まで煮詰めてみました。
得られる音は、フンワリ型のVPから、まるで高級モニターのようにパーン!と弾ける音が出てきて
音の重なりがくっきり見通しが良くなり、低域は17cmクラスのウーハーを鳴らしているような
どっしりと落ち着いた音…などなど、良い事尽くめなのです。
特筆すべき点は、兎に角 音が前に飛んでくることです
これは早速FAPSさんに知らせねば!! と思いましてレポート一方的にお送り致しました。
と言う事で、前述の内容をFAPSラボで実験して頂き、是非ともメーカーさんとしての評価をしてみて頂けないでしょうか
FAPSさんへの希望は、ロング押し座、これは製作が難しいとのことですが、ロングスパイク共々、製品化出来ないでしょうか??
どうか宜しくお願い致します
FAPS試験結果
今回頂いた課題、「ロング押し座、これは製作が難しいとのことですが、ロングスパイク共々、製品化出来ないでしょうか??」
これにお答えするために、早速ご報告内容の検証作業を行い、対策を検討いたしました。
以下、その内容をご報告させていただきます。
最初に結論を書いてしまいます。 まったくその通りでした。
試聴テストは、最初にパイオニアのピュアモルトVPで行いました。写真は、ほとんど同じなので省略です。
言葉は悪いですが、「おい、この音、本当にVPかよ!」 まさにそんな感じです。
音が飛んでくるくる。目の前に広がっている音場の演奏者の位置から音がこちらに向かってきます。
スピーカーの存在は、まったく分かりません。
低音域の充実感も素晴らしい! まったくVPらしくない・・・・というかVPが本性を現した!
A様と同じ感想になってしまいました。
それでは! と 私が長年愛用している、オーディオフィジックのブリロン1.0で試験を行いました。以下は、その報告です。
今回の試聴状況 久しぶりのヨアヒム3兄弟の揃い踏みです。両端:ブリロン 中央:ArgentaEdition 下:Anima
中央の音響パネルRASWALLの足は、出来上がったばかりのメタルベースです。150mm持ち上げただけで効果倍増でした。
このスピーカーは、ありとあらゆるソースで耳のタコにタコが出来る位聞いています。
そして、同じ設計者ヨアヒムがSONICSを創設して世に出した自信作、Anima と ArgentaEditionの登場により、出番が減り、
FAPS試聴室の第1線を退いていました。
久々のブリロン登場、やっぱり力不足なんだろうな・・・と思いつつ聞いた最初の音で、またもや「嘘だろう!」
何も説明しなかったら、この音が小さなブリロンの音とは誰も分からないでしょう。
直径10cm足らずの小さいウーハーから、ズーンと深く沈み、相当の音圧感まで響いています。
ブリロンに不満を感じていた部分、ちっちゃいながらも一生懸命頑張って凄い音を出そうとしている感じ・・・・・
その印象がなかったのです。余裕たっぷりという感じでなっているのです。
一瞬スピーカーの選択を間違えたかと思ったほどです。
驚いて女房を試聴室に呼びました。「どう?」
Argentaが鳴っていると思ったようで、「凄いけど高音がいつもより柔らかくない??」
ブリロンが鳴っていると知って非常に驚いていました。「音の余裕感、低音の切れが良くて迫力が凄い!」
このチューニングは、誰が聞いてもその変化の大きさ、音の向上を実感するでしょう。
こんな簡単なチューニングでここまで良くなるとは・・・・驚きです。
ポイントの一つは、幅が狭いスピーカーをスタンドから離すようにしてスッキリした形の押し座で「軽く」側面保持すること。
※ 今回も押しつけ座の根元を指で締めただけです。スピーカーと押し座がきちんと密着すれば、落ちることはほとんどありません。
もう一つ、ツイーターの高さは、通常の大型スピーカー並みの高さにセットすること。これも大事です。
このセッティングの大きな効果は、確かに確認しました。
幅が180mm以下の小型スピーカーをSide-Pressでお使いの皆様には必須のツールと言えると思います。
今回のパイオニアのVP、もともとCPの高い優れたスピーカーですが、その魅了が大幅に増大します。
PMCのGB1I、モニターオーディオのブロンズシリーズ、ALR/JORDANのENTRYシリーズ、FOSTEXのGXシリーズ等々、いろいろ使えそうです。
ちなみに幅の広いトルネードスタンドの場合でしたら幅が220mm以下なら使えるようになりますね。
部品の販売については、今回の試作特注品と同じものの販売は、よほどお願いされない限り行いません。
正直に言うと、値段が高いです、ほとんどすべて職人さんの手間賃です。一日で8本作るのが精一杯。
その割に外観が悪く、ボルトは傾き、塗装のため、回しにくく、しかも回しているうちに塗装が剥げます。
これを通常の商品として売るわけにはいかないのです。
今回の溶接押し座は売りませんが、これと同等以上のものが作れる可能性があるので試作を進めています。
多分、販売できると思います。できるように頑張ってみます。
うまくいって、音に満足できれば早ければ10月中旬に紹介したいと思います。
ロングスパイクは、100mm、220mm、300mmをオプション販売しています。
220、300mmについては、塗装の問題があることを承知でお求めくださいね。
市販の1m程度のM8ロングボルトを買ってきて切断し、先端をグラインダー等でスパイク状にすれば同じようなものも作れます。
(FAPSのものは、きちんと旋盤加工しています。)
自作派の方もいろいろ試されると面白いと思います。
追記
その後も様々な試験を続けており、このロング押し座の有効性を確認中です。
そのすべてにおいて、驚くような好変化を遂げていることからこの方式の有効性は間違いないと思います。
なるべく早く商品化を図るように努力します。
今回の一連の試験の中で非常に目立ったのが、パイオニアのピュアモルトVPの優秀さです。
上の写真のミニスタンドのハイセッティング(延長ベースに100mmのロングスパイクをセット)では、驚異的ともいえる再生を行っています。
価格が約6倍のSONICSのアニマと渡り合うような感じまであります。
こんなセッティングの安いスピーカーから出ている音とは、誰も信じられないでしょう。私がそうであったように・・・。
今回のミニスタンドのハイセッティングセットを一緒にしても約11万円です。
Side-Pressスタンドとのセットにしてという条件付きですが、このスピーカーは無条件にお勧めです。
お近くの方、遊びがてらで結構です。是非試聴室にお越しいただき驚いてくださいませ。
私はパイオニアさんの営業でもなく、まったく無関係ですが、実にすばらしいスピーカーを作ってくれたものと感謝します。
パイオニアの営業さんにこの音を聞いて驚いて欲しいものです。
こんな良いものだったのか・・・意識を新たにするでしょうね。
おっと、そんなことしたら価格があがってしまうか・・・2009年9月30日現在の最安値、1本3万921円だそうです(笑)
以上でFAPSのご報告を終えさせていただきます。
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