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  幻の音響パネル RASWALLU 試作レポート  2009.12.02

新発売予定の新型音響パネル 「FAPS Stage Creator 凛」の開発、実は一筋縄ではいきませんでした。
今回のレポートでは新音響パネルの開発の経緯と共に、最終的に幻の存在となったRASWALLUの紹介をさせていただきます。

従来型RASWALLは、ユーザー様から数多くのご意見ご要望を受けておりました。
その要望等を実現するために新型の音響パネルの開発に鋭意着手したのです。
最初に改善を要すると思われたご意見、ご要望の中身について簡単にご紹介いたします。(順不同です)

FAPS 音響パネル

従来型RASWALLに対するご意見ご要望(例)

・価格が高い
・作りが必要以上に立派すぎる   
・経年劣化で色焼けが起きる
・塗装して欲しい
・安いベースが欲しい
・音の反射が強すぎる傾向
・音場が全体に上に上がる傾向
・響きの影響で多少音がぼける
・背の高いものが欲しい
・極めて大きな音量で共振する場合がある
・木質が収縮して隙間が出きた
・壁に取り付けられるようにして欲しい
・蝶つがいで連結して欲しい
・その他


開発の経緯

約1年ほど前に自分自身の考えとお客様のご意見・要望を考慮して新型の開発に着手しました。
RASWALLの大きな特徴である3角柱によるパネルイメージは踏襲するというのが基本構想でした。

RASWALLは、知名度の低さに加え、値段が高いという面があったため販売は伸び悩み状態でした。
このため、新製品開発に際して重要視したことにコスト低減がありました。
民主党新政権の話題になっている「事業仕分け」と同様なことをRASWALLについて時間をかけて行っていました。

素材の提供元、新たにお願いした製品製作元のプロの皆さんと顔を突き合わせて打ち合わせし、その意見を活かして仕様の策定を行いました。
無駄を省くだけではなく、お互いに拘る部分は尊重し、適正品質と機能の確保に留意して協議を行いました。

勿論オーディオ機材ですので音質についても下記視点で検討を加えました。
・従来型のRASWALLと同等以上の音響改善が図れること
・音の明瞭度を高くし、音のぼけ・もやつきを減らす
・素材は、音への拘りを大切に安易に輸入松材や合板を使わず国産(地元の)赤松無垢材を使用する
・製品は、塗装を行う

具体的に何を行ったのか、その結果はどうだったのか。
実に多くの勉強をさせてもらいました。過度な設計仕様の見直しも実施。
何よりも時間とお金をかけて作った新製品予定のRASWALLUが消滅するという想定外の事態をなりました。

以下、実際に写真を使ってご紹介させていただきます。長くなりますので、先に結論を書いてしまいます。

様々な試みを行った結果、コスト低減も含めかなりの効果が得られ、当初の目的もほぼ達成しました。
従来型RASWALLを上回る音質をもち大幅なコストダウンを果たしたものができました。それがここで紹介するRASWALLUです。

しかし、私は、これをそのまま世に出すことを断念し、更なる高みを求めRASWALLUは幻の製品といたしました。
商品化断念の原因となったのは、音質でした。

音域バランスが上寄りになりがち。音場が浮揚してしまう。音の散乱傾向が大きい。中低域の押し出し感がスポイルされている。
この部分を私自身が許容・納得できなかったのです。

RASWALLUの試作結果を活かし、その後の試行錯誤の結果、自分自身で満足し得る素晴らしいものができました。
それが、新製品 FAPS Stage Creator 凛(りん) です。
音響パネルという軽々しい名前を付けたくない、そう思わせたものができました。
その詳細は、今しばらくお待ちください。


幻の音響パネル RASWALLU 

FAPS 音響パネル

FAPS 音響パネル
RASWALLUの美麗な表面 (クリア塗装)

左 RASWALLU       右 従来型RASWALL

RASWALLUの細かな説明は省略し、試作開発で行った様々な施策を比較写真で紹介いたします。

幻のRASWALLU 従来型RASWALL
FAPS 音響パネル FAPS 音響パネル

 高さ1560 幅590 厚さ80mm  RASWALLを一回り大型化、性能向上を実現 
パネル奥行き拡大、作用面積・体積を拡大、音の吸収能力向上
反射体素材は厳選   コストのかかる塗装を標準採用
部品数削減、仕上げの簡易化でコスト低減

FAPS 音響パネル 

高さ1500 幅590 厚さ66mm
   反射・散乱・吸収をバランスさせて設計
 素材・外観・仕上げに注力 高級家具調
無塗装

FAPS 音響パネル
反射構造体(3角柱)の大きさ、数、配置の違い
凹形状部分の容積を大幅に拡大して音の吸収効率を向上。 その影響による反射体数減に伴う作用面積減少を深さの拡大で対応 
FAPS 音響パネル
標準添付を想定したボルト取付けベース (レベルアジャスター付き) 
小型化と同時に安定性を確保
FAPS 音響パネル
別売大型特製ベース(1万円/2ケ) 
差し込み式のため、僅かに前後のぐらつきが発生する
FAPS 音響パネル
表面露出のビス接合。外枠板厚30mm。強度向上・仕上げ&コスト削減        釘接合+釘穴隠し処理 外枠板厚25mm     
FAPS 音響パネル
コーナー部 寄木構造廃止(コスト低減)
各部品は隔離配置。 部品費用&組立て費用の低減
FAPS 音響パネル
コーナー部 寄木細工構造
各部品は密着配置。 部品及び組立ての精度確保が必須
FAPS 音響パネルFAPS 音響パネルFAPS スピーカースタンド
裏板を有孔合板6mmからシナ合板9mmに変更  
接着+釘から接着+ビス止めに変更
同等コストで強度向上。背面の音響的作用を反射体として明確化。

裏板を埋め込み方式から背面貼り付け方式に変更(コスト低減)
塗装     RASWALLUはコストアップ覚悟で塗装を標準採用。  下地1回塗り、クリア塗装(半艶)2回塗り (裏面:塗装なし)

RASWALLU 塗装あり        RASWALL(塗装なし)
表面性状(光沢&ツルツル触感)    表面性状(自然な木目の触感)
FAPS 音響パネル
RASWALL無塗装品を4年使用した後の色変化(日焼け)実例

左 使用開始直後        右 使用4年目
FAPS 音響パネル
塗装品に照明を当てた状態 : 光沢・反射あり
FAPS 音響パネル
無塗装品に照明を当てた状態
使用素材   RASWALL、RASWALLU共に高コストであるが木質の優れた地松(赤松)の厳選部材を採用

地松(赤松)の原木  (大きな節が多い)

身の締まりと硬さが抜群   音響用素材に最適

【参考】 安価な加工済み輸入米松 (木が緩く軽く地松とは別物)
  
住宅建材用途品

長期乾燥後に部材を切り出してRASWALLに使用

【参考】 輸入米松 節が少なく一見綺麗

伐採後即時加工が多く、狂いが出やすいので家具には不向き
製造体制

素材供給元 (山形県大江町)

製造元工場 (山形県寒河江市)

音響パネル一枚でも学ぶびきこと、考えるべきことが数多くありました。
ここで得られた成果とノウハウが新製品 FAPS Stage Creator 凛(りん) に活かされました。

以上