2011.04.13
地震で壊れたスピーカーの修理と機材の耐震対策に関するレポート 参考
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東日本大震災から一か月が経ちましたが、以前として強い余震が続いております。
被災されたお客様も多くいるとお聞きしていますが、その後いかがでしょうか。一日も早い復興を心よりお祈りいたします。
弊社所在地茨城県日立市も震度6強の本震後も、連日のように震度4〜5の地震が発生しており、常に不安を感じながらも何とか耐え忍んでおります。
そんな中で少しづつではありますが、FAPS内被災部の復旧および耐震対策を行っており、何とか部屋の片づけが一段落いたしました。
本レポートではスタンドと一緒に転倒したり、約2mの高さから落ちて破損したスピーカー類の点検と修繕に関するものです。
オーディオ機材関係の修理や耐震対策に少しでもお役にたてれば幸いです。
3月11日、14時46分、震度6強の地震に被災した直後の試聴室の様子と破損したスピーカーの一部です。
正面右側のスタンド(HS/NRとArtist)は向きが変わってしまっていますが、転倒を免れましたが、左側は悲惨な状況となってしまいました。
部屋正面の機材保管用クローゼット(写真右)の最上部、その前に置いてあるデジタルピアノ上部・下部からスピーカーや丸太スタンド等が落下しました。
これらが左側の音響パネル「凛」を押し倒し、それに押されてその前に設置してあった2台のスタンドがスピーカーと一緒に押し倒されていました。
右側は、クローゼットからオーディオフィジック社のブリロン、ハーベス社のLS3/5a等が落下し、下部のスピーカーを直撃しましまた。
2台のNASも弾き飛ばされ、ラック最上部のアナログプレーヤーは床に落下しておりました。
落下物等の影響を受けなかった床直刺しの機材は転倒を免れ、インシュレーターやラック面に置いた機材は滑り落ちたような傾向が感じられました。
設置してあったスピーカー、パネルには傷が発生してしまいましたが、転倒を免れたものやラック内機材が無傷であったことが不幸中の幸いでした。
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(1)PMC DB1i の修理 |
PMCの小型スピーカーDB1iは、上の写真の中央付近に倒れているサイドプレス・スピーカースタンドと共に床に叩きつけられました。
背面バッフル付近にあった側面押し座が中央付近まで移動していることからもわかるように相当な衝撃が加わったようです。
幸いなことに外観的にはスピーカーボックス及びユニットの破損はなく、助かった・・と思いました。
しかし音出しをしてみると、ウーハーが動きません・・・・ やられた!!です。
大音量での再生で数十mmは前後に振動しているウーハーユニットが簡単に壊れるとは思えません。
原因はスピーカー内部の断線と推定し、背面のスピーカーターミナルケースに取り付けられているネットワークを点検しました。 |
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端子台とネットワーク部分を横から写した写真です。
下側のスピーカーターミナルに取り付けられている金属プレート4枚がネットワーク基板を貫通し、半田付けにより基板を固定してありました。
写真右側赤○内の金属板が浮き上がっていて、
回路パターンの剥がれと半田割れが生じていました。
基板上のコンデンサーとコイルは結構重さがあるので、スピーカー転倒時に基板自体が動いてしまったのでしょう。
ウーハーへの配線に直接信号を流すと音が出ましたので、この部分が原因と判明しました。 |
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基板パターンの剥離状態 |
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補修後の様子。
他の部分も点検し、再半田付けを行いました。
修理結果はOK!
元の音が出るようになりました。 |
(2)B&W N805 ツイーターの修理 |
N8052台は、クローゼットの中央最上部の約2mの高さからクローゼットの扉を押し開けて転落、
真下にあったソニックスのアニマを弾き飛ばしてから床に転落、
左棚最上部に保管しておいたソニックスのArgentaエディションは、真下のジョセフオーディオのRM7−XLを直撃後に床に落ちました。
最後にデジタルピアノの上に置いていた直径30cmの松丸太が落ちたようです。
このはずみでデジタルピアノ下部に収納していた、クライナのK102も飛び出し、
箱に深い傷がついてしまいました。 |
クローゼット収納例 |
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N805は、左右ともツイーターカバーが吹き飛び、
片方はユニットそのものが外れて飛び出してしまい
ドーム部が潰れていました。
今回は駄目もとで、このツイーターを修理することにしました。
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破損したユニットの様子。
比較的行儀良く落ちた様子。
全体的なドーム形状は維持されており、
凹み2カ所を復元すれば使えそうだと判断しました。
修理方法は、車の板金修理で話題の液体窒素で冷やしてから温めて凹みを戻す方法にも興味がありましたが、
ボイスコイルやボビン等への悪影響がありそうなので止めました。
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修理方法は、愛用している粘着剤付きの耳掃除棒を使いました。
100均ショップで20本100円程度で販売されているものです。
綿棒の片側に粘着剤が塗ってあり、この粘り具合がちょうど良いように思えたのです。
凹み部に粘着部を軽く当て、少し粘りつけてから少し早めに引っ張り上げます。何度かやっているうちに、パチン! という音がして凹みが元に戻りました。 |
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2カ所の凹みを直した状態。
部分的に線上の撚れが残ってしまいましたが、何とかドーム状に復帰。
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プラスティック樹脂でできたスピーカーユニットの保護カバー(サランネット)も爪が数カ所折損していたので瞬間接着剤で復旧。
余談ですが、スピーカー保管時はサランネットをつけたまま保管するのが良いと実感しました。
LS3/5aも同じ高さから落ちましたが、ボックスには傷がついてしまったものの、厚くてしっかり張ってあるサランネットの効果でユニットの破損を免れていました。
凹んだツイーターカバーも変形を修正 |
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ツイーター取付用のゴムオーリングもどこかに飛んで行ってしまい片側が行方不明。
とりあえず輪ゴムで代用しました。
不明だったOリングもその後に見つかり、正式復旧しています。 |
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左側上面の傷もポリッシャーで磨いて修正
フロントに多少の傷があるものの、何とか直りました。
肝心の音ですが、左右を比較再生した結果では、
特に違和感を感じませんでした。現役復帰です。
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(3) SONICS Argenta Editionのウーハーユニット修理 |
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ウーハーの破損状態
センタードームが陥没して割れが発生、
何かの角が当たったような形で、ドームとコーン紙にまたがる亀裂が発生していました。
これはユニット交換しかないな・・・と思ったのですが、問い合わせた結果、交換ユニットの入手は望み薄とのことでした。
廃棄するには惜しい、落ちついた音の素晴らしい音のスピーカーなので駄目もとで修理を行いました。
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ウーハーユニットを外し、裏からみた状態です。
裂け目が貫通して裏面が膨らんでいましたが、ユニット全体の形状には影響がない様子。
コーンを前後に動かしても異音がないので、ボイスコイル部分も無事な様子でした。
避けたコーン紙部分を裏表から指で挟み、コーン紙の繊維をほどくように揉みほぐして凸凹の平坦化を行いました。 |
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凹んだセンタードームは、普通の綿棒をL字型に折り曲げ
破損部分に差し込み裏側から押しだすようにして修正しました。
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陥没してしまったセンタードームとコーン紙部分は
写真のような縫い棒を使ってひっぱりあげました。
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成形が終わった後に、ドーム部のひび割れとコーン紙の裂け目に瞬間接着剤を流して固定しました。
この状態では裂け目部分にまだ隙間が残っています。 |
ボンド乾燥後の状態です。
コーンの形状は何とか復帰、再生音も特に問題はないようです。
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水で2倍程度に薄めた木工用ボンドを割れ目に染みこませるように塗りました。
使用時にはサランネットを付けて使用すれば良いでしょう(汗)
下は、修理の終わったSonics Argenta Edition
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(4) 各機材の転落・転倒防止対策(例) |
部屋およびスピーカーの修理が終わった状態の試聴室です。 |
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クローゼット収納部最上部底面には、滑り止めシートを貼りつけ
スピーカーが前に飛び出さないように突っ張り棒と補助用のロープを張りました。
機材同士も密着するようにして移動しにくいようにしました。
(ご参考:サイドボード、食器棚等にも突っ張り棒で食器類の落下防止を行い、さらに扉の解放防止金具を取り付けました)
この後に震度5強の地震がきましたが、スピーカーが多少動いた程度で落下の傾向は感じられませんでしたので一定の効果はあるようです。
各機材の脚部には滑り止め、背の高いものはインシュロックで相互に結びつけて倒れ防止対策を行いました。 |
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CD収納ラックは、各ラックをボルトで強固に連結し
壁面、天井面からの転倒防止を追加しました。
棚板下部の受けピンもすべて接着剤で固定して抜け落ち防止を図りました。
音響パネルの転倒防止およびプロジェクター等の機材落下防止も実施、軽い機材は幅広ゴムバンド等で固定しました。
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●以上が今回FAPSで行ったスピーカーの修理内容と機材の耐震工作の内容です。
スピーカー修理の結果については、今後聴きこんでその効果の程度を確認してまいります。
機材の耐震対策に対しては、余震がまだまだ続きそうな様子ですので実際の効果を見ながら更なる改善を図りたいと思っております。
皆様が行っておられます耐震対策についても、是非紹介させていただきたいと思っておりますので情報のご提供をお願いいたします。
原発事故も含め、被災生活が長引くことが予想されますが、皆で助け合い、励まし合って明日に向かって進みたいと思っております。
あらためて被災地の一日も早い復興を心より祈念いたします。 FAPS 志賀 |