以下は導入・調整後の結果をお纏めくださったK様の最終レポートです。
T−TOPスタンドの使用に際しても独自の工夫をされていましたが、今回もその工夫が行われていました。
”禁断のセッティング”の登場です。
サイドプレス設営記 山梨のK
ビクターのソフトドームを使ったSX型番は30年以上続きましたが、今のカタログにはありません。
3ウエイは1995年前後に発売されたSX-700スピリット、2ウエイはバスレフになったSX-500ドルチェ・エテルノで最後になりました。
ソフトドームのSXは、バッフルに無垢板またはランバーコアを使っているのが特徴で、そればカエデであったりマホガニーであったり、米松であったりします。
SX-500ドルチェ・エテルノはバッフルに桜無垢板のランバーコアが使われており、6面全部が桜の突き板で仕上げられているだけではなく、
なんと内部も桜の突き板で仕上げられています。
クルトミューラーコーンやアルニコマグネットへのこだわりとともに、日本製としてはとても趣味性の高いシリーズになっています。
私は居間でSX-700スピリットをT-TOPスタンドに乗せており、今回書斎にてSX-500ドルチェ・エテルノをサイドプレススタンドに乗せてみました。
サイドプレスを注文するきっかけとなったのは、真空管アンプの導入です。
それまでマランツの個性でクールに鳴っていたSXが、対照的な締りのない音になってしまいました。
少し高くしたい。見映えを考えて10センチ低いサイドプレスを見積もりに出しましたが、FAPS代表から考え直すようにと忠告。
そこで、左スピーカーを脚立に乗せて高さを実感してみました。(写真1)
(写真1)
明瞭な中音が再生され、今までは中ぬけの音を聴いていたと実感、ノーマルのサイドプレスを注文しました。
最初に、サイドプレスの脚スパイクを4本として後ろ向きに設営(写真2)。
(写真2)
音源はモノラル音源とライブ音源を使いました。
スピーカーの下はスパイク2本で支持、両側には押し座を使います。
今までに比べれば劇的に改善されましたが、音は比較的固くライブの雰囲気が乏しい音でした。
やはりバッフルに近いところで押さえたのが良くなかったようです。
次に左側スタンドをノーマルに戻して3本スパイクで設営。これは水平が楽に取れます。(写真3)
(写真3)
押し座は後ろを押さえることになります。
これで左右を聴き比べると、ノーマルではライブのホール感が無理なく再生されるのと同時に、大変音離れの良い音になりました。
音量が上がったように聴こえます。
スピーカーの下には自重受け皿を使わず、重心を1本スパイクで受けました。(写真4)
(写真4)
そこで右も同じように設営しました。
SXは箱鳴きを活用したスピーカーです。押し座もわりと大きいゴムなので、できるなら使いたくありません。
そこで支柱とスピーカー側面を計ると2センチほど。ここでもスパイクが使えそうです。
早速スパイクを取り付け、水準器を2つ使って根気よく水平を取ってロックナットを締めました。(写真5)
(写真5)
スパイクの受けは1円玉に薄い両面テープを張ってスピーカーに貼りました。(写真6)
(写真6)
充分な効果が確認できました。
JAZZのベースの音が弦らしくブルンとSXらしからぬ明瞭さで聴こえます。
そこで、右側も同じようにスパイク支持として仕上げました。(写真7)
(写真7)
ようやく納得のいく音に仕上がりました。
スピーカーから音が出ている感じはしません。
部屋いっぱいに、しかもピンポイントな音像が広がり、ボーカルなどはそこでマイクに向かって立っているイメージが浮かびます。
これがSX500本来の音でしょうか。もしかしたら開発者もこの実力を知らないかもしれませんね。
仕上げに転倒抑制用のボルトを取り付け、逸品館のレーザーセッターで細部調整を行いました。
12キロもあるスピーカーをスパイクの三点支持で取り付けたわけですが、
底面が重心の位置にあるので、側面のスパイクをアルミに食い込ませてロックナットを締めると、
スタンドと一体化したようにがっちりと取り付けられました。
暫くこれで楽しみます。FAPS様、アドヴァイスありがとうございます。
※ 下記の私の感想に対し、K様の考察文もいただきました。示唆に富む内容と感じましたので紹介させていただきます。
【 考察 】
純正スタンドとサイドプレスでこれほどの違いがあることが確認できたわけですが、純正スタンドは床から50センチあまり、
ということは、スタンドを介しての床とスピーカー相互の影響だけでなく、
同じ位の高さのある家具や壁面などの影響をたくさん受けているということが考えられます。
クロスオーバー周波数が3000ヘルツなので、聴取位置に対してツイーターだけでなくウーファーの位置も低すぎます。
放送局の2S-305があれほど高い鉄パイプの台に乗せられているのはとても合理的ですしFAPSの考え方に近いものがあります。
私は2S-305に習って鉄パイプを組んでSX-7を乗せていたので、FAPSの製品を目にしたときにピンと来るものがありました。
もう一つは、箱に木材を使っているかぎり振動することは避けられないので、スピーカーから放射される音はユニットと箱の音が合成されたものです。
私たちが聴く音は、ユニットの構成に関らず、箱の点音源と部屋環境が合成されたものということができます。
サイドプレスは点音源としての箱を理想的に実現できるため、広大でリアルな音場が生まれるのではないでしょうか。
その証拠に聴く位置があまりシビアではありません。
今回の実験で痛感したことは、まずはスピーカーの動作環境を改善してあげることが第一で、
設計者ですら想像もしていなかった実力を発揮させることができます。
そのことを基準にして部屋の音響調整や他の機器を変えていけば無駄な投資をせずに改善が図れるのではないかということです。
何かに乗せて好みの音を作っていくというのも楽しみの一つですし、これもその一つであるかもしれませんが、
電子機器にもかかわらず非科学的な妄想や迷信、思い込みが横行するオーディオの世界に、
FAPSのスタンドはひとつの信頼できる基準を提供していると思います。
★続編★ 3点スパイクによるスピーカー支持の簡単な実施方法のご提案
K様のレポートが読まれた他のユーザー様が真似をして怪我をしたり大事なスピーカーを壊したりしては気の毒とのことで、
K様が考えられた転倒抑止ボルトを利用した安全な設営方法を紹介させていただきます。
重たいスピーカーを抱きかかえて必死に水平をとったのがウソのように簡単にできたのことです。
ご参考になさってください。 ほぼ同じ内容でユーザラボにも記事を追加させていただきました。
【 禁断の技を安全に行う方法 】
重心の位置に薄い両面テープを貼ったスパイク受け(1円玉)を貼り付けますが、
他の方のリポートにあったように、10キロ以上のスピーカーを1点で支えるのには1円玉では無理です。
そこで厚さ2ミリの打ち抜き板※に取り替えましたが、転倒抑止ボルトを利用して安全に取り替えることができました。
この方法は“禁断の技”に適用することができます。
※ FAPSのロングスパイクに添付されているアルミ円盤とほぼ同仕様のものです。
禁断なので勧めるわけにはいきませんが、簡単に三点スパイクを実現することができ、安全性も格段に向上します。
参考までに。(一部、FAPSにて加筆しております)
@ 転倒抑止ボルトをスパイクの前後の位置(一番奥と手前の穴)に二本取り付ける。
A スパイクおよびスパイク受けもセットし、スパイクは少し下げておく。
B 転倒抑止ボルトの上にスピーカーを乗せる。
Cサイドスパイクを取付け、軽く当てるくらいで仮固定する。これだけでスピーカーは安定している。
D この状態で転倒抑止ボルトを回して前後の水平を取る。
E 前後の水平が取れたら底面スパイクをスパイク受けに当て、抑止ボルトが浮かない程度にトルクを与え、ロック。
F スピーカーサイドのスパイクを調節(左右同時にレンチを当てて回す)して左右の水平を取る。
G 前後左右の水平が取れたら転倒抑止ボルトを2ミリ程度下げてロックする。
H 水平を微調整したあと、サイドスパイクをある程度スパイク受けに食い込ませてロック。
I
万が一サイドスパイクが緩んだ時にも前後のボルトがスピーカー倒れ防止となり、スピーカー損傷を軽減することができます。
FAPS注釈
スパイクによるスピーカー自重受けは音質的にダイレクト感が強まるため、各ユーザー様が独自の方法でやられております。
以下の方法は、220mmや300mmのロングスパイクを使用する場合のセッティング方法の1例です。
ユーザーラボにも度々登場されている(O様 価格COM ID Shoujhi 様)の発案です。
K様と似た考えであり、前後の受け座でスピーカーを一度仮置きしてからスパイクをセットされています。
これだけ長いものを残すと音質的に悪影響を与えますので、設置後に前後の押し座は撤去されています。
FAPS志賀の感想
オールスパイクのスピーカー支持は、Side-Press発売当初はお勧めしたこともあったのですが、
現在は一応、禁断の技としております(笑)
スピーカー音の伝達が鋭敏化されることにより、スピーカーの素の音がダイレクトに出るようになります。
私個人的には、そういう音が好きなのですが、
この支持方法は、物理的にも安全的にも問題が多いためメーカーサイドとしては禁じ手としたのです。
少しでも側面押し座が緩んだ場合、スピーカーが簡単に脱落しますので十分にご注意ください。
脱落が起きるとスピーカー側面に派手な傷が出来ることもご承知置きください。
1円玉を粘着テープで張り付け、そこにスパイクを少し深めに刺せば多少は改善されます。
<ご参考>
標準押し座の音質的な改善を図り安全性の確保も行ったのが、現在のプロタイプの押し座です。
押し座 Proタイプ
押し座と軸が回転せずに一体化していますので振動の伝達特性が向上するのです。
ただし軸と一緒に押し座が回ってしまうため使いにくいのが難点です。
対策として、支柱のネジ穴のネジ山をヤスリ等で削り取ってしまいストレート穴(通称:バカ穴)にしてしまい、
押し圧の調整は支柱内側のナットで行うようにすると作業が楽になります。
続編で紹介させていただきましたセッティング方法も有効だと思いますので参考になさってください。
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