試作完了品の評価レポート |
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2024年9月某日、千葉にお住まいのMitake様が、FAPS試聴室にこられました。 開発が終了したばかりの新型スタンド「覚醒Tall」の評価をなさってくださいました。 その日のご感想等をまとめたレポートを頂戴しましたのでご紹介させていただきます。 |
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9月のダブル連休をつなぐように有給をとり、久々に10連休という長く遅い夏休みを取れることとなりました。 しばらくご無沙汰していた志賀さんに試聴に伺いたい一報。すると本格的に高さを上げた覚醒が仕上がったとのこと。 絶対聞かねば!と即座に日程調整して千葉から日立へと在来線を乗り継いで行ってきました。 ツィーターを耳の高さにとするのがスピーカーセッティングの定石のように言われていますが、実は私自身、覚醒を使いだしてからどんどんと高さが上がってしまい、声の帯域を司るユニットが耳の高さに来るように自然となってしまいました。 FAPSではまさにその背高版覚醒(以下、Tallと呼称)が待ち受けていました。 |
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メインSPはアコースティックエナジーのAE1でTallに載っています。 さらにDSPで120Hzあたりにクロス(メインSPの低域もカット)されたオーディオフィジック社のサブウーハー「ルナ」2台を用い、2.2chシステムへと変貌を遂げていました。 このルナも大型SP用「覚醒LOW」に載っていました。 ショルティ・シカゴのマーラー巨人3楽章を試聴曲として早速音出し。 聞いた瞬間に「ああ、もうこれは完成形だと」思わせるデキ。完全にスピーカーが空間に浮かび上がりとにかく音が速いのです。 直接音主体に感じる類の速さではなく間接音までもが速い。AE1が全方位波面形成機になっている感覚です。 前回(2020/11)伺った際の試聴時とは異なり、短時間で次々と試聴曲を変え、更に覚醒Originalにも載せ替えてと進めていきました。 かの時は覚醒のあまりにもの革新に思考が止まり聞き惚れてしまったのですが、今はもうユーザーとなって4年弱、様々な覚醒の音に馴染め聴きどころがわかるようになりました。 Originalとの差は一聴瞭然ですぐにTallに戻しました。細かくどこがどうと聴き分けて言語化する必要のないほどの明確な差なのです。 このTallにはT字板が3枚使われており、中間に1枚入ることで3本の支柱がねじれるような動きが大幅に抑制されていて、安心感が圧倒的に高くなっています。以前、OriginalでMonitor 500Xを載せた際、自重そのものとバッフルヘビーなことが相まって、ねじれの揺れが気になりました。 Tallではねじれ不安がなくなりましたが、背が高くなったことから、載せるSPのサイズはOriginalより小型としたほうが良いだろうと思えます。(そもそも一時期志賀さんが用いられていたDX-5だとスコーカー位置が高くなりすぎますね。DX-3でも高いかも) ちなみに自宅Originalで前1、後2の支えを前後逆にしたことがあります。 明らかに前1の音のほうが自然、しかもバッフル板センター下部に当てるより、バッフル板の厚み分中に入れて底板に当てるほうが良いのです。(つまりバッフル板を抑制させない。) 志賀さんとも常々話していたことなのですが、これって完全にチェロのエンドピンと同じなのではないか?そう思って調べてみたら http://blog.office.chatblanc.biz/?eid=7 でエンドピンの音質差を言及されていました。(となると両膝の代わりが後端2本の支柱??) さて、試聴に戻ります。 AE1は巷で言われるような過激な音とは感じません。素っ気なくハイスピード。ただちょっと素っ気なさすぎる気がします。 そこでルナのウーファーを止め、DSPスルーでAE1だけの2chで試聴。とたんに過激さが増します。エネルギッシュの先のアグレッシブな表現。中域の質感までも大きく変わります。 低域の振幅の上に中域が乗ることでAE1らしさが出ていたのだとわかります。 改めて2.2ch仕様に戻し、DSPのディレイ設定と位相を見直しました。ルナが奥まって置かれていることから、AE1に遅延を入れて時間軸を揃えてみると、これが大きく効くのです。 この変化はスイープでの周波数測定ではまずわかりません。しかし音はかなり違います。音場がグッと深みを持ち始めました。 極端な言い方をすれば、低域のアタックが耳に届く前に高調波残響成分が先に届いていたこととなるので、この時間軸揃えはとても効くのでしょう。(15年ほど前にYAMAHA AVアンプのマルチチャンネル自動音場設定を用いて、時間軸揃えの大切さを学びました。) その後は他の小型SPもいろいろ聞いてみようとなりました。 |
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私の好みだとDB1i、志賀さんはAE1の中域ドライブ感に惚れ込まれている様子。 ここまで朝から一気にやってもう夕刻。9時間、あっという間でした。 そういやTallの音質傾向の説明などがありませんね。 これは載せた瞬間にそのSPの生成りの音が出るからだと思っていただいて構いません。 Originalよりもさらに各SPの差を如実に表します。 いろいろいじってみて・変えてみてどっちの音が良いなどというチューニング的試行錯誤が必要ないからだと言い換えても良いでしょう。 載せる位置にきちんと気を配り、内振り角をしっかり揃える(志賀さんはレーザーポインタ利用して再現性を確保されていました)くらいしか、することありませんから。 覚醒Tallを用い、2.1, 2.2chとすれば、もう上がりなのじゃないかと志賀さんと二人で納得したのでした。 追伸:志賀さん、奥様、急な訪問を快く受け入れてくださいまして誠にありがとうございました。 あっという間に時間が過ぎ去り、帰りのJRでは眠りこけてしまいました(笑) |
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以下、自宅のシステムについて | |||
2.2ch 仕様 YAMAHA NS-BP182(バスレフポート塞ぐ) 飛びねこ TDB20W(FW208Nダブルバスレフ) DSP cross:85Hz cutoff:-48db/oct, 遅延合わせ済み |
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オリジナル覚醒(最初期版) + 首部10cm嵩上げ + 木製ブロック横置き9cm嵩上げ (木製ブロックがよくズレて少し危ない) TDB20W下にもT-Base H-100 (これもかなりの効き目、外すと超低域が生気を失う) |
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アンプ AIYIMA A07 max x3台 (左右独立アンプ + Woofer) 実は訪問前から、2.2ch + DSP という構成にはなっていました。しかしメインSPがどうにも決まらずKENWOOD LS-11ES, FOSTEX GX-100, DIATONE DS-B1、果てはNS-1000M(覚醒未使用)までも導入しています。どれも帯域内に独特の主張がみなぎりしっくりきません。 1000Mの良さを改めて見直したりもし、2.2chにせず1000Mのみで大型SP用覚醒に移行することまで考えました。ただ1000Mは声の帯域の下のほうの音場感に違和感があり、音量スイートスポットも必然的に高くなることから運用を諦めました。 ここで、別目的で入手したNS-BP182という格安品を繋いでみたら、私の使用環境では実に良く音が馴染むのです。音質の良し悪しではなく、波面の馴染みが良いという感覚です。同格~上位モデルのNS-BP200, NS-B330も試してみましたが、なぜか182のほうが良いのです。 解像度などはむしろ低いほうかもしれません。キラメキなども有りません。 ですが、ダブルバスレフを30Hzから明確に立ち上げ、100Hz台が膨らまない・にじまないようにクロスオーバー・位相・遅延・グライコまでも駆使することで、夜中でもOKな音量で、ホールの床鳴りの"静けさ"のような実体感を狙っています。 主張するHiFiを目指さず、馴染みの良いLoFiを目指しているとも言えるかもしれません。 ツィーターの質には少々不満があります。が、すでに各種リボンを入手済みなのでそのうちDSP+A07max(4台め・入手済み)でツィーターを切り替えできるように組んでみようと思います。 とにかく小型SP+覚醒は楽です。 インシュレーターがどうだ、アオリ角がどうだと微調整の必要がなく、高さを決めたらあとはSP間距離と内振り角のみです。どれも部屋由来のパラメーターですから、SP入れ替えは載せ替えるだけです。 あとはDSPによる調整、ウーファー側を固定(その前にウーファーだけ音出しして、cut offを5Hz刻みで決めました。ダブルバスレフのせいかもしれませんがかなり敏感に変化します。)、あとはメインSPをどう繋げるかだけを調整します。 このときスマホアプリの"spectroid"(←オススメです)を用いて周波数特性も見ていきます。 最低域をcutしたメインSPたちが中低域をどう演出しているか、これがすごく露骨にわかるのです。最低域への伸長と中低域の質感の両立がかなり難しいのだと実感し、だからこそMid Bassを用いた4way SPが最終形態だと言われる意見も理解できます。 現在、PCをミュージックサーバー化し、DSP+デジタルアンプ郡、小型SP 2.2ch & 覚醒。とにかく安上がりです。しかし、自身のオーディオ歴の中で最も"静か"に音楽を楽しむようになりました。 |
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● FAPS 志賀の感想
新製品、覚醒Tallの完成直後と言う素晴らしいタイミングにお越しくださりありがとうございました。 |
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