自分の音を追い求めて・・・・・
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 都内にお住まいのA様の Side-Press Artist チューニングレポート   
 ”Side-Press Artistの使いこなしと注意点について

歴代のサイドプレス・スピーカースタンドをご愛用くださっているA様から、新たなレポートを頂戴しました。
新型Artistの正式発売に先立ち事前モニターをお願い、というよりも思い切りケチをつけてくださいとお願いしていたのです。

尊敬をもって「超タイトフェチ」との称号を差し上げたいくらいのタイト大好きなA様、
しかも通常のリスナー様が出したこともないような大音量で音楽鑑賞をなされることもあります。
優に30畳は超える広い室内の空気が、揺り動かされるような感じになるほどです。

Artistは、RBスタンドの持つ研ぎ澄まされたようなタイトさ、緊張感がない代わりに非常に充実した音色感、エネルギー感があります。
音場表現の良さで定評のあるRBスタンドの上を行き、他のスピーカースタンドでは決して出せないような非常に広大な音場表現が可能です。

超タイト派、大音量派のA様がArtistをどのように感じ、何をなされたか。
以下、A様渾身の素晴らしいレポートをご紹介させていただきます。すべて原文通りとなっております。
写真もご提供いただいたものを使わせていただきました。


Side-Press Artistの使いこなしと注意点について

FAPSさん、何時もお世話になっております。
新型スタンド「Artist」を購入させて頂きまして一ヶ月ほど経ちますが
その間に種々改良ポイントを模索して参りまして、一定の効果を確認致しましたので
レポートにまとめてみました。

以下「Artist」をこれから購入される方・お使いの方への参考に
私が行ったチューンをご紹介したいと思います。

「Artist」は、従来機以上に広大な音場と、高い透明感を併せ持った
素晴らしいスタンドだと思います。
また、特徴として中低域の量感が非常に大きいのも魅力です。

しかしながら、搭載するスピーカーによっては、元々低域の強いスピーカーもありますので
これをオリジナルの「Artist」にそのまま搭載した場合、異常に低域が増強されてしまい
トーンバランスが崩れてしまう事もあります。

一例として、私が常用しているPMC TB2i の場合、独特のトランスミッションライン
と呼ばれるバックロードにより、普通に設置してもかなりの低音が出ます。

今回のチューンの第一歩は、先ずこの低域を抑え込む事から始まりました。

● ベース・スパイクの延長による低域のコントロールについて

「Artist」導入後、最初に搭載したのが前述のPMC TB2i だったのですが、
オリジナル状態のままですと、まるでサブウーハーを鳴らしているのでは?
と思う程、低域が増強されてしまいます。  

ただし低音が団子になってしまうことはなく、従来以上に明確な輪郭と音色感があります。
低音表現に解像度という言葉が使えるほど良質な低音であり、この低音は欲しい!と感じました

そこで、併用しているSide-Press HS/RBが非常がタイトな音質である事を念頭に
そのベースが一枚構造で、かなりの重量が有る事を踏まえ、「Artist」のベース上に
1〜3Kg程の鉄塊を置いてみたのですが、これは全く逆方向に向いてしまいました。
却って低域が増強されてしまい、更にそれが緩い音質になってしまいました。

その後、側面押し座の位置調整・ハイポジションセット用のスパイク長の調整などを行ってみましたが、
若干、音質に差が出るものの、抜本的解決には至りませんでした。

私と同様に、親しいサイドプレス愛好家の友人数名とも協議した結果、思い切ってベース部の
スパイクを長い物にしてみたらどうだろうか?、という意見が自然発生的に出て参りまして
早速FAPSさんにお願いし、10cmスパイクを取り寄せ、標準添付の短いスパイクと交換してみましたころ、劇的に効果がありました。

強過ぎた低域が抑えられ、従来機同様、非常にフラットになり、ベースラインをしっかり聴き取れるようになったのです。

結果的には、10cmスパイクを目一杯使用し、上下のナットが締め付けられるギリギリまで延長した状態が最も安定した音質になりましたが、
そこへ辿り付くまでには、3cmから始めて1cm単位で高くして行きました。

この変化は特筆すべき点です。
1cm長くする毎に、確実に低域が抑えられ、楽曲全体が見通しの良い音に変わって行きます。
耳の肥えた方であれば、5mm単位で音の変化に気が付かれると思います。(図:1,2)

図−1  ベース部スパイク長さの変更

図−2  ベース部スパイクの長さ調整結果(例)

因みに、HS/RBでも同様の実験を行ってみましたが、元来重量のあるラウンドベースの為か
然程大きな変化は望めませんが、確実に低域のコントロールは可能である事も確認しております。

注意すべき点として、4本のスパイクを均等に荷重が掛かる様、「スピーカーを搭載した状態で」
しっかりと長さの微調整を行い、スタンド上部を両手で軽く揺らしてみた時に
決してグラ付かない様、調整する事

その為には、必ず「最終的なスタンド設置場所」でこの作業を行う事が大切です。
他の場所でこれを行っても、床面は決して水平ではありませんから、正式な場所に移動させると
必ずガタ付きが出ます。

また、スピーカーを搭載しない状態で調整しても、搭載後の重量バランスが変化しますから
必ずスピーカーを搭載した状態 + 最終設置位置で調整する事が肝要です。

4点がしっかりと床に接地していないと、「Artist」の持つ高い空間表現は得られません。
そう言った意味では、従来機の3点支持に比して、より慎重な調整が必要となります。

もう一点、ロングスパイクをベースに取り付ける際、写真のようなロングナットは
決して使用しない事、これは確実に音が鈍ります。(図:3)

図−3   スパイク長さの変更方法  (右:延長ナット使用は不可)

通常のナットで上下をしっかりと固定する事が大切です。

その後、Acoustic Energy社のAE1 Classicでも同様のチューンを行いましたが
PMCより若干短い長さでかなり良いトーンバランスが得られております。
その差は写真では見え難いかもしれませんが、僅か5mm!
これだけで全く低域の量感は変わってきます。

追記しておきますが、これは一定以上の音量を出した場合に顕著に見られる現象ですので
常用音量が非常に低い、一般的なご家庭ではあまり気にならないかもしれません。
寧ろ、一種のサブウーハー的な効果で、豊かな音として表現されるかもしれません。

● 更なる音質改善方法

前述の様に、ロングスパイクを使用して低域のコントロールが出来る事は判明致しましたが
これをじっくり聴き込んでみますと、若干、高域に不足を感じました。
超広域が伸びきっていないのです。

また、異常とも言える私の「タイトフェチ」な耳には、もう一歩、HS/RBで得られるタイトさ
この点が不足している事も聴き取れました。

特に、和太鼓のバチが皮に当たる瞬間の瞬発的な倍音成分から来るタイトさ
バスドラムをキックした場合でも全く同じ事ですが、そう言った点でもう一歩タイトさが欲しい

そこで着目したのは、側面押し座部の支柱の長さです。
HS/RBで側面支柱の有効長は280mm
「Artist」では有効長が210mm

この70mmの差は大きいのではないか?? (素人考えですが)
この長さは響きの面で大きな変化を与えているのではないであろうか?

「Artist」は70mm短い、その分 側面支柱の質量が軽くなっている訳ですから
これを増やしてやったら何らかの変化はある筈。

という考えで、実験してみたのが写真の様に、使用していない側面押し座の穴をボルトで塞いでしまい、質量を稼ぐ方法です。

しかし、長いボルトでは見栄えも悪いですので、FAPSさんに無理をお願いし
「Artist」の支柱に差し込み、左右のナットを締めて面一になるボルトを仕入れて頂きました。
写真にある長さ25mmのボルトがそれです。左右のナット2個と合わせて14グラム弱
このセットを側面支柱の押し座穴全てに固定しました。(図:4、5)

図−4  M8、25mmボルト・ナット   右:一組の質量

図−5  側面押し座穴のボルト閉塞による質量追加チューニング(例)

「Artist」の押し座穴は6ヶ所、内1ヶ所は押し座で使用しますから
残り5穴×2(左右)、計10ヶ所、14グラム×10ヶ所=140グラムの増加になります。
実際には左右のスタンドで20ヶ所分必要になりますね。

側面支柱の有効長差70mmが140グラムと どれほど差異があるのかは不明ですが
これだけの重量が乗れば必ず変化はある筈…

さて、音質の方はどうなったか…
これも驚くべき効果を発揮してくれました!!
高域がグンと伸びる様になり、更に、全帯域で音が更にタイトになったのです。
大成功と言えましょう。
20ヶ所もナットを締めるのは面倒と思われるかもしれませんが
ものの5分で1組分のボルトを取付けられます

ここで言うタイトさとは、ベーススパイクが低域に大きく働きかけるのに対し
中高域に働きかける効果が有る様です。

FAPSさんではオプション部品として、この25mmボルトを販売されていますが
実質4千円のチューニング代金(笑

さて、この方法での注意点ですが
性質の異なるスピーカー3種を使用して比較しました

先ず、一般的なシルクドームツイータで、あまり低域の量感が無いスピーカーでは
ベーススパイクを短め、或いはオリジナルのままとし
側面支柱のボルト数で全体の音調を好みの状態に持って行く方が良い様です。

この際、側面支柱全ての穴にボルトを取付けた場合、高域は出るけれども、上下方向の空間が
若干寸詰まりな音になる傾向が見られます。
その場合には、上部から1本ずつ取り外していき、十分な空間表現が得られるポイントを見つけ出します。

次にハードドーム・ツイータのスピーカーでは、元々高域がハッキリし過ぎる傾向が強いので
側面支柱のボルトを必要最小限に留める方が良い結果が得られます。

但し、これらの変化はベーススパイクの長さと密接に関係して来ますので、一ヶ所弄ったら
じっくりと音を聴き込んで、何が不足なのか・何が過剰なのかをはっきりさせ
次の作業(ベース・スパイクなのか側面ボルトなのか)に入るべきでしょう。

AE1 Classicでは、未だその適正値が決まらず、側面ボルトは取り外した状態で
ベース・スパイクの微調整を続けております。

何れにせよ、完璧という事はありませんから、タイトさと中低域・高域のバランス
これらを上手く組み合わせ、最適な妥協点を見付けるのが良いと思います。

以上、現況はこの様な状態ですが、私の行っているセッティングの基本事項は

* Pro押し座の使用
* 押し座位置はスピーカー最下部後方のコーナー

この2点を大前提として実験しております。

これまで一つの音、という概念で、空間表現とフラットな音を提供してきたサイドプレスに
音質のチューンを可能とする製品を投入された事は、非常に意義深い事と考えます

且つ、自分自身の音を創造して行く事の出来る楽しみを与えてくれるスタンドとして
私はこの「Artist」を高く評価したいと思います。
長文失礼致しました。


●FAPS志賀の感想です

A様、本当に素晴らしいレポートをお送りくださり、本当にありがとうございました。
大変にお忙しいお仕事の中、このように内容が濃い実験をなさってくださり、立派なレポートにしてくださったことに対し、深く御礼申し上げます。

本来は、ご指摘頂いた事項も含め、FAPS自身がやるべきであったことも多く、赤面の思いです。

ご指摘頂いた音の傾向は把握しており、それをお伝えしての試聴であった訳ですが、やはり掘り下げ不足であったようです。
開発時の悩み等もご紹介させていただき、感想に代えさせていただきます。

実は、現在のArtistに近い姿のスタンドは、試作の初期段階で出来ておりました。(写真、左)
従来よりも遥かに軽量にすること、スタンドを2ピース構造にし、部材を積極的に振動させ、振動を徹底的に吸収させること、
これは新型スタンドの特許出願にも関連する重要ポイントだったのです。
その効果は凄まじく、所期の目標は達成できたとさえ感じていました。

左が試作スタンドの1例です。外観は似ていますが、構造、材質、サイズが
まったく異なっています。この試作品の重さは何と2kg台です!

しかしRBに比べタイト感が少ない・・・・これが新型スタンドの課題、開発上の最大の難問でした。
各部の構造、材質、寸法を幾度となく変更し、これらと音の関係を習得し、チューニングを重ねて参りました。

しかし、RBの音はRBの形と作りがあって出せるもの。
目の前にあるArtistの音を聞き、これをRBと同じ音にする必要はないだろう。
形を変えて同じ音が出るものを売って、何の意味があるのだ!?
作れば作るほどに、聴けば聴くほどに、その思いが強くなっていきました。
 
必要な音は出し、余計な音は出さない  スピーカースタンドは音響的に透明であれ!
これがFAPS製品の基本理念です。

音を出さないはずのスタンドの音が何故変わるの!? 自己矛盾にも陥りました。

理由は分かりませんが、現実に自分の理念を徹底的に具現化した二つの製品が違う音を出すのです
しかも、どちらも魅力的。
しかし、今はどうやっても二つを一緒にした製品ができない。
RBの音は一つの完成形として認め、存在させ、別の完成形を存在させても良いのではないか!
この答えに辿りつくまでに半年以上かかりました。  すみません、余談が長くなりすぎました。

こういう傾向をもつArtistをタイトフェチのA様が聞いたらどう思うか!?
私も、お馴染みのお客様も、A様は絶対にRBを選ぶだろうと想像。
ボロクソに言われる恐れすら感じていました(笑)

そして、案の定・・・・ タイトさが足りない! というのが最初の言葉でありました。
やっぱりな、向いていないなと感じたわけです。
しかし、Artistの出す広大な音場、豊かな音に魅かれたのでしょうか、
ブツブツ言いながらも使い続け、なんと2セット目も購入くださいました。
そこに至るまでのA様の苦労が今回のレポートと強く感じています。
 
今回、A様がご指摘くださったこと、改良くださったチューニングの効果は、FAPSラボにて確認致しました。
好みの音質、音量の違いがありますから、すべての皆様にこの結果が当てはまるとは限りませんが、
Artistスピーカースタンドを使いこなす上で、非常に参考になると思います。是非ご活用ください。
 
ちなみに・・・支柱上部にウエイトを追加する方法・・・理屈も効果も分かりますが、
お願いだから・・・勘弁して! と思ってしまいます。
必死に考えたデザインの製品が電柱に・・・可哀想過ぎるというのもありますが(笑)、
前述の様に、二者は全く別物として捕らえて下さる事を希望します。

A様、お忙しい中で様々な試行と改良をなさってくださり、本当にありがとうございました。
この場をお借りして改めて御礼申し上げます。

                   2010.12.8  FAPS 志賀 一司