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 標準型Side−Pressスタンドによる宙吊りセッティング 

トルネードスタンドで導入されている方が急増しているスピーカーの宙吊りセッティング。

このFAPSラボでもハーベスのLS3/5Aおよびコンパクトの宙吊りセッティングの事例を紹介しております。

今回は、標準型のSide-Pressスタンドによる宙吊りセッティングのレポートです。


(1)宙吊りセッティング!?

宙吊りセッティング・・・スピーカーのセッティングの話題になると出てくるのがこの言葉、

スピーカーのセッティングにおいて影響の大きいのが床への振動伝播による床の共振、鳴りです。
この影響から逃げるための切り札的な言葉として出てくるのが「宙吊りセッティング」
天井からスピーカーを吊って床から隔離するという発想です。

しかしこの宙吊りセッティングを実現した事例を見聞きした事例は、筆者の知るところではほとんどありませんでした。
しかし、当社が開発したSide-Press方式のスピーカースタンドは、実に簡単に宙吊りセッティングを可能にしてしまいました。

そして宙吊りされたスピーカーが、実に自由奔放という感じでおおらかに鳴るのを実体験することができました。


(2)Side-Pressトルネードスタンドによる宙吊りセッティング例

トルネードスタンドによる宙吊りセッティング方式の実例写真です。
いずれもFAPS試聴室でお聞きいただくことができます。

宙吊りセッティングは、側面の保持位置及び背面の回転防止押えの場所により、大きく音質が変化します。
様々なセッティングを試みた結果に基づく、セッティングの基本は、以下の方法です。
基本セッティングで音を確認してから、好みでチューニングすることをお勧めいたします。

●側面保持方法
   可能な限りエンクロージャーの背面側に寄せ、エンクロジャーの強度が高いと思われる部分を用いる。
   締め付け方は、スピーカーが脱落しない程度までとし、支柱が大きくしなるような締め付けは行わない。
   側面押し座の数は、2個とする。重いスピーカーだからと言って片側に押し座を2個使わない。(振動・異音・脱落の原因となります)

●背面の回転防止座
   回転止め位置は、可能な限りエンクロージャーの下端近くとする。
   箱鳴り系のスピーカー(エンクロージャー板厚が薄いスピーカー)の背面中央付近を押すと音質が大きく変化してしまいます。
   押し座の材質によっても相当に音が変化します。
   一般的には、標準添付の首ふり式押し座をそのまま使うのが望ましいようです。

 

FAPS スピーカースタンド

FAPS スピーカースタンド
FAPS スピーカースタンド FAPS スピーカースタンド FAPS スピーカースタンド
Audiophisic社 ブリロンの宙吊りセッティング ハーベス社 LS3/5Aの宙吊りセッティング ハーベス社 コンパクトの宙吊りセッティング

   


(4)標準型のSide-Pressスタンドによる宙吊りセッティングレポート

FAPSさんも試して評価をお願いします! と頼まれてやってみたのが、以下のレポートです。

使用したスタンドは、標準型Side-Press、スピーカーは、音質比較の点から最も使い込んでいるAudiophsic社の初代ブリロン1.0(改)です。

FAPS スピーカースタンド

標準型のSide-Pressスタンドによる宙吊りセッティング試聴風景

FAPS スピーカースタンド FAPS スピーカースタンド

FAPS スピーカースタンド

宙吊りセッティング外観

今回は、他のお客様が試された方法と同様に、
回転止めを使わないセッティングとしました。

スピーカーを側面2点で吊った状態でスピーカーが鉛直方向になるように
スピーカーの重心に相当する位置を選んでいます。

セッティング詳細

スピーカーは、側面2点だけで
しっかりと保持されています。

指で押すと押し座を軸に簡単に回転します。

 


(3)標準型のSide-Pressスタンドによるブリロン宙吊りセッティング音質評価

セッティング状態について

 見た目は、写真の通りです。
 スタンド位置に対してスピーカーが前寄りになっていますが、後方にオフセットしてある左右支柱の効果で重心はあまり変化しておらず
 物理的な安定性は、十分に保たれており、まったく問題がないレベルです。

 側面押し座の押し付け力は、とても少なく、押し座に付属している樹脂製リングが軽く反り始める程度です。

 FAPS スピーカースタンド
 

音質評価

 試聴の前に先のお客様の報告を聞いていましたので、実はこのセッティングには、あまり期待していませんでした。

 スピーカーの側面中央部付近を押さえるセッティングです。
 非常に剛性の高いブリロンのエンクロージャーですが、やはり相当の影響を受けてしまい、
 自由に鳴ることができず音が生きてこないのでは・・・・?  と想像していました。

 実際に出てきた音は・・・・・

 非常に驚かされました!!
 通常セッティングに比べ、明らかにスピーカーが自由におおらかに音楽を奏でています。

 音の余韻が相当に増え豊かな響きと言える音。美しい音になったとも言えます。
 通常セッティングに比べると一段とおとなしく、自然になったと言えます。

 ある意味でブリロンの音質とも言われてきた、硬質で先鋭的な尖った印象の音が消え失せました。
 ここは、評価の分かれる部分でしょう。
 ギターの爪弾きのゾッとするようなリアル感、打楽器系の舜発音のエッジが和らいだと言えるかもしれません。

 通常でもほとんどスピーカーの存在感を感じないのですが、中高域の滑らかさが増したためか、更に見えなくなりました。

 クラシック音楽のオーケストラの奥行き感も明らかに深くなっています。
 ソプラノの声も柔らかく、眼前で歌っていると思うような臨場感が素晴らしいです。
 基本的にクラシック党の私には、もう元に戻せない状態となりました。

 この予想外の好結果は何故!!??

追加試聴 (LS3/5Aを使った追試)

 予想外の結果に気を良くして(笑)、ハーベスのLS3/5Aでも同じセッティングを試みました。

 結果は・・・・いかんです。最初に予想した音・・・・ LS3/5Aの自由な鳴りが逆に抑えられたような結果となりました。

 エンクロージャーの板厚の薄さ、つくりの影響がはっきりと出てきたという印象です。
 トルネードスタンドで宙吊りのした時の豊かな音とはまったく別物の音です。

 これは、使えません。真似されたくないので写真も貼りません。
      


(4)考察

トルネードスタンドによる宙吊りと標準Side-Pressによる宙吊りの大きな違いは、側面押し座位置の違いです。
この違いを考えてみました。

●トルネードスタンドによる宙吊りセッティング

好結果を出したトルネードスタンドによる宙吊りは、すべて側面の最奥部、
つまり側板と背面バッフルの接合部に近い部分を押していました。

エンクロージャーの強度が高く、振動しにくい部分を押していたことになり、
前後のバッフル、側板、天板、底板が自由に振動できていたことになります。
これが聞いてビックリするような効果となり、箱鳴り系のスピ―カー向きという結論に結びついたものです。

●標準Side-Pressによる宙吊りセッティング

今回、良くない結果に終わった箱鳴り系スピーカーと言えるLS3/5Aのケースは、
トルネードスタンド宙吊りで良い音がでる理屈と反対のセッティングを行ったことになると考えました。
当然の結果とも考えます。

では、同じ(悪い)結果になるはずの、ブリロンが良い結果を出した理由は何か!?

エンクロージャーの剛性が高かったため・・・・ これが考えられる理由の一つです。

いろいろ考えているうちに思い出したことがありました!

このブリロンは、内部配線を変更しているのですが、その際に見た内部のことを思い出したのです。

 ブリロンの内部構造

ブリロンの内部には、前後バッフルの中間部付近に厚さ10mm程度の内部バッフルが付いています。

上の写真で小さな穴が開いている板です。黒いパイプのようなものはバスレフポートの先端部です。
この中間バッフルは、全周に渡って強固に接着されており、内部音響の整理とエンクロージャー剛性を高めるために作用しています。

今回の宙吊りセッティングで側面を押した部分は、偶然に内部バッフルの取り付け部分付近であったため、
エンクロージャーの鳴りを阻害せずに、宙吊り特有の自由な鳴りを得られたものと考えます。

今回の好結果は、ブリロン特有のものと考えるのが妥当のようです。


(5)標準Side-Pressによる宙吊りセッティングの実施方法について

今回の結果を元に検討しました。、

標準Side-Pressによる宙吊りセッティングを行う場合は、
標準セッティングのスピーカー位置を動かさずに宙吊り化を図ることが基本となります。

標準セッティングで良い音が出ている状態で下部の自重受け座を撤去します。
スピーカーは、回転し、前面下部はスタンド自重受け支柱に当たって止まります。

この状態で下図のようなイメージの適切な形状と強度を持つ背面押しアダプターを作り、スピーカーを押し出して正面に向けるようにします。
自重受け座取り付け用のM8ボルト穴を使ってL型アダプターを固定すると良いでしょう。

背面押しボルトの位置は、スピーカーの下端に近い方が良い結果となるようです。
スピーカーケーブル端子と干渉するケースが多いので、位置・形状は良く検討した方が良いと思います。


背面押しボルトの代わりに、標準添付の自重受け座を用いても構わないと思います。

本方法による宙吊りセッティングは、トルネードスタンドによる宙りと同等の結果が得られると思われます。

★ 注意! ★

宙吊りセッティングは、スピーカーの取り付けが不十分な場合、スピーカーが落下する可能性もあります。
実施される場合は、必ず自己責任にて行ってください。

以上