FAPS   Side-Press Mini スピーカースタンドお客様レポート

   兵庫県にお住まいのT様 (TANNOY社の小型スピーカーAutograph Mini )


今回のレポートは、Side-Pressスタンド適用が無理としていたTANNOY社の小型スピーカーAutograph Miniへの導入レポートです。

このスピーカーは、断面が6角形でSide-Pressの押し座が当てられる部分がほとんど線状になっているものです。



T様は、文中でもご紹介いたしますが、セカンドシステムにおいてQUAD社のスピーカーで標準Side-Pressスタンドを使われており、
その効果に惹かれ、何としてでもメインシステムのAutograph Miniでもミニスタンドを使いたいという強い希望をお持ちでした。

何度か、電話、メール等でその困難さについて打ち合わせを行い、一度は導入は無理との答えになったのですが・・・・
T様から押し座を自分で作ってでもやりたいとの新たな申し入れがあり、すべて特注サイズのミニスタンドを製作・納入しました。

結果は、T様の期待通りとなり大変に喜ばれております。

極めて特殊な導入事例となりますが、T様のご厚意もあり、その経緯も含めてご紹介させていただきます。

スタンドの特注仕様等を含む詳細で非常に長文のレポートとなってしまったため、

同様なスピーカーをお持ちの方に有益な情報となる部分以外は、割愛させていただきました。

最初に、導入レポートと共に頂いたSide-Pressミニスタンド導入前後の写真を紹介させていただきます。

 FAPS スピーカースタンド




最初の電話相談後にいただいたメールより (特注押し座のご相談)

TANNOY社AutographMiniへの、御社製品サイドプレスミニの適用に付きまして、志賀様のアドバイスを元に現在の問題点を2点に集約させて頂きました。

1:スピーカーの独特な形状に伴い、鋭角で側面押し座と接触する為、面支持ではなく線支持になってしまうこと。

2:スピーカー本体の幅が210mmである為、サイドプレスミニの適用限界である202mmを僅か8mmとはいえ超えてしまうこと。

1についてはスピーカー重量が4kgであることを考慮すると線支持でも恐らく大丈夫との事でしたが、こちらが精神衛生上不安定です(苦笑)。

分度器が手元に無いので憶測ですが、押し座ゴム面との接触角度は約100°です。
押し座ゴム面への切り込み加工が出来ればいいのですが、ゴム面と押し座中心の+ネジ(ボルト)頭とのクリアランスが僅か1mmとのお話でしたね。

2については特注での本体幅の延長をご提案頂きましたが既に無改造でも280mmですので、
既にお話しした通り僅か120cm弱のラックの天板上に左右両スピーカーと、それらに挟まれる形でCDPとその上に21型液晶テレビ等の機材がひしめいている関係上、
たとえ10mmずつとは言えども本体幅の延長は可能な限り避けたいと申し上げて置きます。


…以上の経緯を踏まえた上で誠に勝手な申し出で申し訳ないのですが、
御社にて本体幅はそのままで専用側面押し座パーツ部分での特注(カスタム)対応を、お願い出来ないでしょうか?

私の素人考えで恐縮なのですが、正規品の対応限界まで残すところ8mm。
これを左右の押し座パーツの交換・後加工で吸収するとすれば残りは僅か4mm。
押し座の固定に支柱との間に挟まれる形で用いられているロックナットを薄型ナットに交換。
押し座のカップ部分と押し座中心のボルトを固定しているロックナットも薄型ナットに交換。
更に押し座中心の+ボルトの頭を通常の山形から皿型ボルトに交換もしくはサンダーで削り加工。
上記交換(加工)で余裕の出たゴム面と押し座中心との寸法差分だけ、
押し座ゴム面への切り込み又は削り加工の追加。

上記4点での交換・加工箇所それぞれについて1mmずつ寸法を詰められれば、
押し座パーツ部分での寸法超過8mm分の吸収は十分可能な話に思えてくるのですが、いかがでしょうか?



FAPS回答より (押し座は自作で)

AutographMiniへのミニスタンド適用に関するスタンド側の問題点は、T様のまとめたものになると思います。

こちらでもAutographMiniの写真を見ながら検討を行ってみました。

まず大きな問題になると思われるのが、エンクロージャーの強度、特にスタンドの押し座が当たる部分の強度です。ここは、ダクト構造になっているのでしょうか。

ダクト状になっているとしたら、板厚もあまりないようなので押したときに変形、損傷する恐れはないのでしょうか。
ある程度の強度があるとしても押し座の硬質ゴム部分(外形35mm、内径25mmのドーナツ状のリングです)で部分的に圧迫力を加えた場合の影響が気になります。

うまく押せている時は良いと思いますが、何かのはずみでずれた場合は、スピーカーが落ちてしまう可能性もありそうです。
やはり、ある程度の面積で側面を押してやらないとまずそうです。

押し座の改造についてご検討いただきましたが、結論を先に言うとご検討された改造は困難です。

まず、押し座の構造ですが、シャフト部分、ドーナツ状の硬質ゴムリングが接着された厚肉キャップ、ナイロンリング、円形割りピンの4つの部品から構成されています。

押し座を押しているように見えるナットはシャフト(ボルト軸)と一体成型加工されており、ナット部分を交換することはできません。
この部品の先端は、押し座中央部分を貫通して3mmほど飛び出しており、その先端は、押し座脱落防止用の円形割りピンを取り付けるような凹型の構造になっております。

押し座のカップの側面に切り欠きを入れると強度が著しく低下し、押しつけ力により変形してしまう可能性があります。
ゴム部分も局所的に押されると変形(挫屈〜切断)を起こし、中央のシャフト先端がエンクロージャーに接触し、破損させる可能性が強いです。

側面を押さえるためには、幅10mm×2、長さ50mm程度のV字型の溝を持つ部品でないと安定した支持は難しそうです。
こうした部品を支柱とスピーカー間に挟み込み、ボルトで押して圧迫するためには、どうしても片側20mm以上の空間が必要になり、標準サイズのミニスタンドでは無理となります。

全体のセッティングについても、このスタンドが効果的に作用するためには、スピーカー周囲に十分な空間が確保されていることが大切です。

何とかスタンドが置ける程度の状態、テレビが側にあるような状態では、セッティングの自由度がなく、思ったような音は得られないと思います。

何か、否定的な回答ばかりで申し訳ないのですが、スピーカーの特殊な形状もあり、積極的にお勧めすることができないのが実情です。

専用の押し座を製作するに際してもスピーカーとの合わせ加工が必要になることと、弊社設備では、そうした精密加工を行うことができないという問題があります。

申し訳ありませんが、T様が押し座部分を自作することを視野に入れて、再度ご検討をお願いできないでしょうか。


T様ご回答より 


押し坐が当たる部分のエンクロージャーの強度ですが、ダクト構造ではないかとご心配頂いている箇所(サイドグリル)は、正面のサランネット〜フロントグリル部分と意匠こそ共通ですが、実際には通気性等は全く無くしっかりとしています。

ただ…グリル地の外側額縁(?)に該当する部分は正に押し坐が当たってくる部分であり、鈍角を挟んでエンクロージャーの裏側から幅15mm程の別パーツとなっています。

私は素人ですのでこのパーツ構成が、エンクロージャー側面の強度的にどういう意味をもっているかは判りません。とは言え一体成形に比べると、確かに不安は残ります。

また、押し座の構造等についても当方の推測が色々と甘かった様でお恥ずかしい限りです。
部品の押し付け力による変形破損の可能性も指摘されており、私の想像以上に押し座のゴム面に掛かる負荷の高さが伺えます。

当方の設置環境へのご指摘は至極もっともであり耳が痛みます。

ただ…裏を返せばこのスペースファクターの制限があってこそ、当方の現在の機器構成も出来上がって来ている訳でして
、限られた環境の中でも現状のボード+インシュレーター以上の可能性が見出せるならと、御社製品に興味を感じたのです。

(失礼ながらスピーカーの周囲に満足いく空間が確保出来るなら、その恩恵は従来のセッティングのままでも反映されると思います)

加えて…現在のスピーカーセッテイングでは動き易く不安定で、実際過去に家人がスピーカーに触れてラックから転落させた事があります。
(ボード上をインシュレーターが滑り易く、更にスピーカーも腰高なので)

当方神戸在住で阪神大震災の被災経験もあり、セッティングの耐震性と音質の両立の点からも、御社製品に注目させて頂いております。

色々申し述べて参りましたが押し座は自作にてご検討下さいとの事ですので、次の休みにでもホームセンターへ赴き知恵を絞ってみます。

名案が浮かびましたらその際に、改めて問い合わせさせて頂きますので宜しくお願い致します。




しばらくしてT様は、セカンドシステム用として標準Side-Pressスタンドを導入されました。
以下は、標準Side-Pressスタンドに至る経緯です。




今回はヘッドホン専用環境として構築してきたサブシステムにて、どうしてもスピーカーを使用したくなったので貴社サイドプレスを注文致します。

CDP:AUDIO ANALOGUE ROSSINI(レクストNS441D施工機)

AMP:LUXMAN SQ-N100(真空管式ヘッドホンアンプとして使用中)

HP:SENNHEISER HD580(ケーブルをStefan Audio Art社Equinoxに交換)

部屋は6畳洋間寝室(床は絨毯)の東西横使いで、機材は西南出窓部分に重ねて設置。
スピーカーは南側長辺の壁沿いに設置予定で、短辺を挟み北向かい側ベッドの上が視聴位置になりそうです。

東面短辺はバルコニーへ出る為の引き違いサッシ戸(ダブルカーテン有)で、西面短辺は西北寄りに部屋出入り口。残りは四枚折れ戸の収納クローゼットとなっています。
床が絨毯なのでスタンドのスパイクはそのまま刺してみるつもりです。

元はと言えばメインシテムの更新に伴う余剰機材の有効利用(HP端子付CDPとHPだけ)から始まったので、今迄スピーカーの使用は前提に無くルームチューニングの類は全く手付かずの部屋です。今後はおいおいスピーカーセッティングの工夫も含めて必要になってくるかと思われます。
志賀様より思い当たる所でのアドバイスを頂ければ幸いです。

諸事情によりここ数年7〜9月期は、このサブシステム環境しか利用出来ていません。

件のオートグラフ・ミニを擁するメインシステムに対し物量で劣るサブシステムではありますが、ヘッドホン限定という条件の下とは言えメインシステム比で聴き劣りの無い様組み上げてきた、こだわりのシステムのつもりでした…が、ヘッドホンは何処までいってもヘッドホンでしかありません。

掛け心地の決して悪くないHD580を使っていても、長時間になると首も凝るし頭部の圧迫感も不快になってきます。

特に疲れている場合には初めからヘッドホンなぞ頭に掛けたくもありません。
そんな時に思い出すのはメインシステムでスピーカーを鳴らして音楽が聴ける事の快適さ…。
そうしてスピーカー導入を考えてはみても、中途半端な内容だとメインシステム比はもちろんヘッドホン比でも聴き劣って落胆する可能性があり、かと言ってあくまでセカンドシステムに高価な商品の導入も憚られます。

また一年の内三ヶ月弱という低い使用頻度にも関わらず、新品を購入するのも何処か勿体無い…。
そこで思い付いたのがオートグラフ・ミニ導入時に使用頻度の低いリビングへと移動させた11Lの再利用です。

今でこそL2モデルの登場に伴い型落ちになったとは言え、11Lは優れたスピーカーでした。
しかも我が家の11LにはAETの最高級スピーカーケーブルSINを用いた特製ジャンパーケーブルを奢ってあります。
…とは言えそれをそのまま持って来るだけでは、あの時買い替えの必要性を感じた物足りなさを今回は払拭しきる事が出来るかどうか自信がありません。

何かプラスアルファになる要素が必要だ…そんな時に思い出したのが貴社のサイドプレスでした。
随分と長くなってしまいましたが顛末はこんな感じになります。

物量で劣るセカンドシステムでメインシステムの存在を脅かす音楽再生を目論んでいます。
ちなみにメインシテムの構成は下記の通りです(スピーカーは割愛)

CDP:ESOTERIC/AIRBOW SA-10 Ultimate
AMP:AIRBOW TERA Cryo


…勿論メインシステムのオートグラフ・ミニへのミニスタンド適用の試みも継続中です。

紆余曲折の末、サッシ用のコの字型アルミ製アングル(1辺2cm程度)を4〜5cmの長さに切り出して、
コの字の窪みにエンクロージャーの角を収めてグリル(表)側と裏側から二線支持出来ないものかと考えています。

ですがまだ未解決の課題も残されており(接触部分までの長さがグリル側と裏側とで微妙に異なる、接触部分での傷付き防止をどうするか、
そもそも金鋸で容易に切断可能なアルミを用いる事での音質面への影響)、最終的にどうなるかは私にも判りません。

しかしこれらの事情を差し置いてもミニスタンドを越えるサイドプレスの音質改善効果を先に体験してみる事が、
今後の私のオーディオの方向性を決めていく上でプラスに働くのではないかと考えています。



この間にもメールによる、詳細な検討が行われました。
あまりにも長くなるため割愛させていただきます。

標準Side-Pressスタンド導入後、しばらくしてセカンドシステムの感想と押し座を自作するのでミニスタンドの特注したいとの連絡がございました。




先日セカンドシステム用に貴社Side-Pressを購入の節は当方の拙い導入レポートに関しまして、的確なアドバイスを下さりありがとうございました。

その後の経緯は後述しますが、今回は従前よりの懸案だったメインシステムのAutographMiniへのミニスタンド適用に目処が立ちましたので、特注の仕様を含めた見積もりをお願い致します。

特注内容1.

スタンド幅を+30mm(支柱間での内幅242+30=272mm)
スピーカーの幅が210mm
20mm角のコの字型アルミアングル自作押し座×2(右と左)
スピーカー角のアングル内への入れ込み分-5mm強×2

アングル凹側からボルト挿入〜押し座回転に対応させる為ロックナット(厚み7.3mm)×2で固定部作成×2
上記合計で272mmに収まる計算です。
押し座ボルトのロックは支柱外側からのみで行う予定です(軽量スピーカーなので大丈夫と考えています)。
ロックナットを通常の6角ナットに変更すれば、ナット1個に付あと1mmずつ程寸法に余裕が出そうです。

特注内容2.

受け座用ネジ穴の増設又は変更
実はスピーカーの底板部分は天板より一回り小さな袴状(左右190mm上下115mm交点は正面側から25mmの位置)になっており、
標準品のままのネジ穴位置では背面端子側の底板に受け座の軸が掛かるぎりぎりの位置になってしまいます。

ですので標準品の仕様に加えて受け座用ネジ穴を更に1つ増設(ネジ穴間は標準の35mmで可)して頂くか、
支柱側を正面として最も手前よりのネジ穴位置を、更に15mm手前側に移動変更(直近中央のネジ穴とのネジ穴間距離は50mm)して頂きたいのです。

後者の場合だと変更したネジ穴の直上に、
丁度スピーカー底板を固定している3箇所のネジ穴(M5皿ビス・底板端子側から15mm)の一つが位置してきます。

Side-PressでのB&W N805推奨使用例の様に、スタンドとスピーカーをネジを介して直接固定する道が開けます。
ですので希望としては当方後者のネジ穴変更の特注を優先させたいのですが、
最終的には志賀様のお返事と特注に要する費用の差額にて判断させて頂きます。(以下省略)


セカンドシステムへのSide-Pressスタンド導入とメインシステムのセッティング改良

今振り返ってみますとサブシステムでとは言え、標準型Side-Pressの音を経験した事が大きなプラスとなっています。

あの時はメインシステムと比較して聴き劣る点の方ばかりに主に意識が向いておりましたが、
今回メインシステム環境の方に戻って来ますとサブシステムの方が優れていたと感じられる部分も出て来ました。

とりわけ以前のメールでメインシステムの音像にミニチュア感があると述べましたが、
よく確かめてみるとミニチュアと言うよりもラックに音が張り付き・詰まっている事による、主に天地方向での音像の寸詰まり感から前述の様な表現が出て来た事に気が付きました。

スピーカーの周りにはできるだけ空間を〜とのアドバイスも標準型Side-Press設置の際に、背面の壁からの距離が僅か2〜3cm変わるだけでも音場の拡がりに大きな差が出た経験から、その重要性を改めて意識させて頂きました。

スペースの制約が厳しいメインシステムであればなおの事、音質改善の為にまだ出来ることは何かないだろうか。

そこで思い付いたのが今迄スピーカー間に置かざるを得なかった液晶テレビを、ラック天板後方の僅かな空きスペースと天井との間に突っ張り棒を2本立て、棒の間に横桟を渡してそこに固定してしまう事でした。



突っ張り棒と横桟にはメタルラック用のパーツを使用して8kg強のテレビに対し、
耐加重10kg(カタログ値)を確保して今迄よりスピーカーのぐっと後方にテレビ画面を追いやる事に成功しました。

…とは言うもののスピーカーの前面バッフル位置から僅か20cm強程度の距離でしかありません。
それでも「スピーカーはテレビ画面より前に出す」と言うセッティングのセオリーの効果を初めて体験出来ました。

それ迄は…ラック上で移動可能なテレビ画面の後退量では却って音が悪くなってしまい、
仕方なく聴感上まだましに聴こえたテレビ画面の方をスピーカーより前に出すセッティングに甘んじていました。

何はともあれスピーカー間から液晶テレビを追い出してみて気が付いたのは、
一言で言えば音場や音像の印象がSide-Pressで聴くセカンドシステムのそれに近付いたという事です。

それまで感じていた天地方向の寸詰まり感に対し、例えばバイオリンソロ等では奏者の音像が天地方向にすっくと立ち上がっている感じが出て来ました。

更に前回のメール中で述べていたメインシステムにおける音像中央部分での厚みとか実体感とかパワーとか述べていたものの何割(?)かが、実はスピーカー間に障害物が存在する事に起因する不自然な音の詰まり・凝固・カタマリによるものであった事にも気が付きました。

現在はそうした過剰な音の物々しさ・物質感(?)は消滅し、…かと言って本来の意味での厚みとか実体感とかパワー感云々が失われたという訳でもなく、
何だか言葉での表現って難しいですよね(笑)。

お蔭様でこの様にメインシステムにおいてもある程度の改善を行う事が出来たのですが、
依然としてラック天板への音像の張り付き感も残っておりますし、液晶テレビの台座と化していた(?)SACDPも未だにスピーカー間に存在し音に影響を残している模様です。

ここで延長ボルトセットによるリフトアップされたミニスタンドセッティングを行えば、スタンド幅拡幅に伴い左右方向でのスピーカー位置のセッティングの自由度はほぼ失われてしまうのですが、ラック天板から距離を取れるばかりでなくSACDPのトップパネルの高さをスピーカー底板の位置とほぼ同等に出来、上述した音質への影響をゼロには出来ないまでもかなり低減出来るものと期待致しております。

(スピーカー間の距離はエンクロージャー外側同士の間隔で60cm強・ユニット中心同士での間隔だと80cm強です)


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FAPS回答と確認事項

・スタンド幅はもう少し余裕(樹脂ワッシャーやロックナットが内側にも入る程度)
を持たせた方が、良いと思いますがいかがでしょうか。

・アルミアングルをお考えのようですが、音色は鮮度が薄れる方向に作用します。鉄製のものがあればそちらの方が良いと思います。
 ここの材質で音色のチューニングができますので、いろいろと試すのも良いと思います。
 幅の余裕を取っておけば、木材も試せると思います。
 樹脂ワッシャーも音色のチューニングで使ってください。音がきつい時に効果があります。

・ボルトの材質は、鉄(SCM材)の黒色酸化被膜付きのものが良いと思います。

・使用するナットは、ミニスタンドに添付したものと同じ4mm厚のものです。

・縦支柱の長さは標準ミニスタンドと同じでよろしいでしょうか。標準Side-Pressと同じ、高さ280mmのものも作ることができます。


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上記の懸案事項も含め、付属部品の内容と員数、材質そして費用等の調整を行い、
ネジ穴位置を移動変更した特注サイズのミニスタンドを製作・納入いたしました。

以下は、T様から頂いた最終レポートです。


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特注ミニスタンド導入レポートです。

FAPS 志賀様


特注Side-Pressミニスタンドを購入させて頂いたIです。
迅速な手配と発送に非常に驚かされ、また感謝申し上げます。

聞けば側面押し座を自作して使用を試みたケースは、私が初めてとの事。
(こちらもお知らせ頂くまで気付きませんでした)

ある意味Side-Pressスタンド史上、始まって以来の快挙(暴挙?)といえるかも知れない使用例。
志賀様におかれましてはかなり気を揉んでおられた事と存じます。

導入前の写真について幾つか補足をします。



CDプレイヤーの上に掛かっている黒い布は、保管中に虫に食われて穴が空き使えなくなったウールのマフラーです。

FAPSラボでの実験レポートを拝見してから、このスタイルになっております。

CDプレイヤーの右横奥の物体はカセットデッキ(ミニコン用)です。
更に右スピーカー奥の物体は使用しなくなった低反発枕(!)です。
左に比べ右スピーカー周辺の空間は、背後の壁と右側の書棚及び机の横壁により大きく制限されています。

音の篭りもしくは不要な反射を何とか低減・吸収出来ないかとの、苦肉の策です。
ラックはオーディオ用という訳でもなく、天板の強度は不足気味です。

よって機材は全てボードの上に設置しています。

スピーカーが載っているのはペット用の大理石ひんやりプレートの上に、制振用メタルシートを敷いたものです。

テレビは先日お伝えした通り、メタルラック用のポール及び突っ張り棒を天板後端と天井の間に2本立て、渡した横桟に固定する事でスピーカーの間から追放しました。


自作押し座パーツはアルミ製のL型建築金物(一辺20mm厚み2mm)を、2ヶ組み合わせてコの字型にしたものです。

  

元々各面に釘穴としてM6×6が空いていたものを、ホームセンターにて購入の上半分に切断して貰い、更に押し座ボルトの通る中心の穴をM8に拡幅加工しました。

金物同士の固定にはアルミ製のM5ネジ10mm及びナット(M6サイズは手に入りませんでした)、押し座固定用には鉄製M8クロメートボルト50mmを用いています。

ここまでの費用は材料代だけでいくと2.5k円程度。

それでいてネジ・ナット・ボルトは随分と余らせています。
押し座を回転可能とする為のストッパー用及び、支柱固定用のロックナットはFAPS様より分売して頂いたものです。



この自作押し座のコの字の凹み部分が、丁度AutographMiniのエンクロージャー側面の鋭角部分を、フロントグリル側とエンクロージャー背面側から挟み込む様に受け止め支持します。

その際に2mm厚の金物の組み合わせ効果により、完成した押し座のフロントグリル側とエンクロージャー背面側の接触線に、同じく2mmの寸法差が生じます(フロントグリル側が長い)。

この寸法差が額縁状の枠部分から一段落ち込んだフロントグリル面とぴったり合致して、側面からの2線支持式でも押し座のボルト軸を安定且つ垂直に保てるのです。

スタンドの組み立ては同時注文させて頂いた延長ボルトセットを初めから組み込んだ形で、ほぼ問題なく進みました。

ただ…左側スタンドの支柱ネジ穴が随分と渋く、押し座ボルトのねじ込みに苦労しました。

幸いボルトヘッドの径が添付の組み立て用レンチと同じ13mmだったので、レンチを押し座凹内のボルトヘッドに縦にあてがい廻す事で事なきを得ましたが、ここはボルトではなく+ネジの方が使い易い気がしました。

実際にスピーカーをスタンドにセットしようとすると、
自重受け穴を手前寄りに移設して頂いた事と、もともとのAutographMiniの奥行きのない造形の所為で、スタンド底面の寸法が浅くなりすぎて仮セット用の本が安定せず、加えてスピーカーの方も押し座の締め付けが甘いと本を抜く際に支持線で滑ってずれやすく、
随分と苦労しました。

AutographMiniは4kgと比較的軽量なので何とかなりましたが、今回の様な特殊なスピーカー形状に起因する必要性がなければ、やはり正規品のゴムによる押し座を使用した方が保持安定性はかなり高い様です。

またセカンドシステムの標準Side-Press同様、今回も受け座部分に通称「L饅頭」を使用しております。

前回導入時に音の線が細い気がする旨相談致しました際に、L饅頭を外して標準の仕様にて音を確認する様アドバイス頂きましたが、その後新品のL饅頭がまだ慣らし(鳴らし?)不足であった事が判明。

充分に使い込まれたCDPのそれと入れ替えセットしてみると、やはりL饅頭はあった方が音質的に好ましいとの結果になりました。

ですので前回の教訓(?)を生かし、今回の使用分もSACDPの下にて充分に使い込まれたものを用いました。

(導入効果) 

さて、最初にスタンドにスピーカーを載せ終えた段階で音を出してみると、音の拡がり方にストレスが感じられなくなった以上に、解像度感が上がり非常に細かい音まで出るようになりました。

ギターソロだとピックの音や弦や胴の細かい擦れや鳴き、奏者の衣擦れや呼吸音まで!

しかしこれでは演奏と言うよりも、演奏に伴う雑音(?)の方に気がいってしまい少々過剰気味です。
細かく聴こえすぎる所為で何処か音がカサついて薄く感じられ、鮮度や躍動感・厚みの点でかなり後退した様に思えました。

そのまま音出ししながらレーザーセッターにて1度目の精密なスピーカー位置決めを行うと、上記の不満点はかなり解消したもののそれでもやはり気になります。

志賀様よりアルミは鮮度低下の方へ作用すると伺っておりましたので、加工し易さその他の事情からアルミ押し座を強行したのはやはり失敗だったか…と思いながらふとシステムを眺めてみると、

何だか以前程スピーカーとTV画面の距離が取れていない気が…。
スタンド正面の足部分が手前に張り出して来ている分、スピーカーの位置そのものが以前より後退してTV画面に接近してしまっていました。

前回セカンドシステムにて標準Side-Pressをセッティングした際、
スタンド背面の壁とは僅か2・3cmの寸法差であっても音質にクリティカルな影響が出る場合があるという経験をしましたので、今回も恐らくそれに該当していると予想。

スタンド設置に伴い微妙にずれてきた画面の左右セット位置修正も兼ねて、横桟の張り出し方向を手前>向こう側に変更する事で更に25mmの前後幅が稼げる事を確認し、翌日液晶テレビのセッティング変更を実施。

加えてスピーカーの内振り角が大きいとスタンドをラック天板の手前ぎりぎりに寄せにくい為、内振り角を浅めにして後方のテレビとの距離を稼ぎつつ、レーザーセッターの焦点位置をぐっと手前に引いてトゥイーターが視聴位置で耳横辺りに来る様再調整しました。
(前日は顔の正面30cm辺りで交差するセッティングでした)

FAPS スピーカースタンド

結果…スタンド及び新セッティングでの馴染みが出た事にもよると思われますが、前掲した不満点は全て消失。

押し座がアルミ製且つ自作である事を差し引いても、特注Side-Pressミニスタンド導入以前と比較して得たものこそあれ、失ったものは何もない…というのが現時点での偽らざる感想です。

特に得たものとしては、一切のストレス感なく自在に広がり〜また縮小できる音像と、スッと肌に染み込んで来る自然な音場表現が挙げられます。

これまでスピーカーの下(天板)方向に向かって重力(?)が感じられる様な鳴り方だったのが、あたかも無重力空間に解き放された様な癖の無さで広がります。

とりわけ音像はボリュームの上下に沿ってリニアに拡大・縮小するのはもちろん、オーケストラの様なダイナミックレンジの広いソースだと強奏部にワーッと拡大したかと思うと一転、蚊の鳴くような弱奏部にも素早く追従して縮小してくれるので、演奏が今迄以上にドラマティックに感じられます。

導入後の添付写真は液晶テレビも含めた新セッティング後のものです。

見辛くて申し訳ないのですが、色々と何処かに接触している様に見えるスタンド本体も、実際には数mmのクリアランスを残して全てギリギリフリーでセットしてあります。

右スピーカー周辺の閉塞感は苦しい所ですが、低反発枕の位置も含め寸法制約上致仕方ない所かとも思います。

液晶テレビ画面には何か布(タペストリーみたいなもの)でも掛けた方が音質的に有利そうですが、視聴の度毎に掛け外しするのも面倒ですしここも妥協点でしょうか。

T様、素晴らしいレポート、ありがとうございました。
当初、私が諦めてしまったオートグラフミニへのSide-Press適用を追い求め、
押し座の自作までされて導入されたT様の努力とオートグラフミニへの愛着の深さに敬意を表します。

自作押し座もうまくできたようで安心いたしました。
正直にこのような形のスピーカーでSide-Pressできるとは思っていなかったので、本当に驚いています。
今までは、無理です、諦めてくださいと言っておりましたが、このような素晴らしい事例の紹介をご了解くださったことに御礼申し上げます。

セッティングについてご意見を言われましたが、このギリギリとも言える設置環境では、申し分のな出来になっていると思います。
ラックが鳴きやすいとお聞きしていますので、その影響を受けやすいプラスチック製の小物等は可能な限り排除した方が良いと思います。
可能であれば正面のガラス扉も外してしまうと、より一層の改善が望めると思います。
生活とのバランスを考慮しながら、できる部分からお試しになってください。

ありがとうございました。                           FAPS 志賀