FAPS Side-Pressトルネード スピーカースタンド お客様レポート
広島にお住まいのY様
( Side-Press トルネードスタンドの特殊セッティング事例のご紹介 )
使用スピーカー : Tannoy Precision8D
今回のレポートは、広島にお住まいのY様から頂いたものです。
Y様は、自宅にて各種音楽の創作活動を行われております。
今回は、そのモニタースピカー用にSide-Pressスタンドの導入を検討くださりました。
通常よりも相当に高い位置に下向きにスピーカーをセットしたいというご要望でありました。
しかし、使用するスピーカーが大きく重く、特殊な背面形状であり、
標準Side-Press及びトルネードスタンドの使用が無理なため、
特注を含めて何度もお打ち合わせをさせていただきました。
最終的には、標準のトルネードスタンドの一部を追加改造し、特殊なセッティングを行うことにより、
Y様のご希望を実現することができました。
非常に珍しいケースでしたが、宅録等でモニタースピーカーのセッティングでお悩みの方には
非常に役にたつ情報と考え、Y様のご理解のもと、打ち合わせの詳細な経緯も含めて紹介させていただきます。
最初に、最終的なセッティング状態を写真でご覧ください。
Y様から頂いた最初のお問い合わせ内容です。
モニタリング用に御社のサイドプレスを導入しようと考えております。
導入の理由は、何より音が良いという評判と、スピーカーを傾け固定出来るという点からです。
使用スピーカーは、TannoyのPrecision8Dです。
ですがこのスピーカー、幅が272mmありまして、
サイドプレスの限界取り付け幅を10mmほど超えてしまっています。
それで、過去のユーザーの方の事例をみると、
側面の支柱を外側に反らせる事により10mmほどの融通は利くようですが、
その事例が従来型サイドプレスのようでして、現在のサイドプレスでも反らせ設置する事が可能なのかお訊きしたいのです。
そういうリスクを負わずに標準で設置出来るトルネードがある事は承知しておりますが、
現在考えているセッティング場所が決して広くなく、出来れば少しでも設置面積が狭いほうが有り難いのです。
FAPSの初回回答です。
10mm幅広のスピーカーを標準Side-Pressにセットしたいとのこと。
通常の使用状態でも押し座を強めに押すと4mm程度は広がっています。
これを更に6mm広げることは、不可能ではないと思いますが・・・
取り付け時の苦労と問題点を考えるとお止めになった方が良いと考えます。
予め支柱を広げておいてスピーカーを強引に押しこむのは、非常に大変です。
旧型は、支柱の飛び出し量が大きかったので最上部付近で何とか10mm広げられたのですが、
現行品は短いため下手すると支柱が曲がってしまう可能性があります。
仮に取り付けられたとしても、押し座の圧力が強くなりすぎて音質に影響すること、
微調整ができない等の問題も出てきます。
幅広なものを特注するとほとんどの部材が変更になるため、トルネードより高くなってしまいます。
またPrecision8Dは、質量が18kgと結構重いので宙吊り方式はちょっと心配です。
L型アダプター付きのフルセットをご利用いただくことになります。
トルネードは、設置高さの自由度が標準Side-Pressよりも大きいので使用環境に合わせた使い方が可能です。
押し座を適合するType60だけとし、トールボーイ取り付け用部品を省略すれば値引きも可能です。
Y様から頂いた2回目のお問い合わせ内容です。
なるほど、かなり厳しいという事がわかり標準型サイドプレスに一旦は未練が無くなりましたが、
あらためてトルネードの仕様などを確認したところ、
新たな問題点と思えるところが出てまいりました。
トルネードでブックシェルフタイプを設置する場合、L字アダプターが必要ですが、
それの取り付け方向部分がスピーカーリア面のヒートシンクと干渉する可能性があるように思いました。
![]() Precision8Dの背面構造 |
![]() トルネードスタンドのスピーカー取り付け構造 |
それと、当方の「傾け」というのは打ち上げ型でなく打ち下ろし型となるので、
L字アダプターを含め中央に存在する支柱が仰角調節の自由をかなり奪ってしまう懸念があります。
現在のセッティングです。座卓を使用しています。
標準型サイドプレスだとスピーカー底面以上の高さにリア面を阻害するものがないので
仰角設定の自由度が上がる…という事で、再び標準型にも未練がでてまいりました。
ふと思ったのですが、標準型の押し座type35の外側のナットをはめないようにする
(もしくはナットの代わりにワッシャーなどで厚み自体で圧力を調節する)と
合計10mm弱ほど幅が稼げるような気がするのですが、あのナットをはめない事や変更する事による音質への影響はあるでしょうか?
そして、もし音質の影響があり特注になるとして、左右の支柱を2〜3cm広げるようなカスタマイズは可能でしょうか?
トルネードより高くなるとの事ですので、ある程度は覚悟しておりますが…。
FAPSの2回目の回答です。
トルネードスタンドの使用上の問題については、了解いたしました。
確かに下向きでの使用は、無理と思います。
L型アダプターの上下を逆にすることにより、高さ方向の自由度が大きくなるので、
ちょうど良い位置にセットして水平に使用するのであれば、少し可能性はありそうですが、無理はしない方が良いと思います。
押し座部分の件ですが、この押し座は強度確保のために特殊な構造になっております。
硬質ゴムを保持している肉厚の金属キャップを後ろから支えているように見えるナットは、
押し座軸との一体成型品であり、外すことはできません。
キャップ取り付け部分も軸部と一体成型された特殊なものになっており、他のボルト等を使用することはできません。
押し座厚さは、片側20mm、両方で40mm。
更にY様のスピーカーのように重いスピーカーは、支柱の内外にロックナットを使用する必要がありますので、
内側のナット厚さ2個分、約10mmが必要になります。
SP幅(272mm) + 押し座厚さ(40mm) + ナット厚さ(10mm) + 支柱幅(19mm×2)
の合計360mmが、スタンドの最少幅となります。
Type35の短い押し座を使用した場合の、支柱しなり寸法とボルト部の外側飛び出し寸法を考慮すると
372〜374mm程度が良いと思います。
ただし、幅の変更は、ベース部分も含めた変更になり、
標準用の製作冶具が使えないため完全な手作業となり、費用増加となってしまいます。
追伸です。
スピーカーの底面高さが、1m以上になっても良いのであれば、
トルネードをSide-Pressと同じように使えるかもしれません。
L型アダプターの上下を逆にして、最上段にセットし、
後方のバーよりも上にSPをセットするというアイディアです。
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追追伸
トルネードを使った変形セッティングを試してみました。
イメージとは異なると思いますが、取り付け角度の制限はありません。
使用したスピーカーは、幅273mm 高さ525mm 奥行き287mm 質量13kgのハーベスコンパクトです。
重心が高くなるので、手でゆらせば多少は揺れますが、SP脱落の心配はないようです。
床からスピーカー底面までの距離は、中央部付近で850mmです。
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今回の場合は、L型アダプターを取り付ける穴を1か所追加加工が必要となります。
添付の写真は、確認用のためインシュロックで軽く縛り付けた状態で撮影しています。
完成品への追加加工となりますが、検討いただけないでしょうか。
Y様から頂いた3回目のお問い合わせ内容です。
追伸のほうに示していただけた、トルネードが標準型サイドプレス的に使用出来るという可能性の結果を待ちたいと思います。
もし可能ならば(いずれにせよ色々高さ変更は必要かもしれませんが)幅が適合しているという事で
多少価格を抑える事も出来るのではないかと考えました。
と、ここまで書いたところで結果メールを頂きました。
わざわざ試験までして頂き、大変恐縮です。
これは素晴らしいです。
スピーカー底面が位置する高さも基本的には弄らなくても良さそうです。
ただ、スピーカーの重心よりも左右の支柱の接点のほうが低い(ようにみえる)ところがやや不安なのですが、
例えば左右の支柱を15cmほど延ばす(押し座の穴はそのまま上へスライドする形)という加工をして頂けるとしたら、
標準サイドプレスの高さ変更と同じ程度の特注費用で済むのでしょうか?
FAPSの3回目の回答です。
早速のご返事ありがとうございました。
トルネードの新しいセッティング方法にご理解いただき、ありがとうございました。
何とかご要望に応えられたかと思っています。
支柱の延長は可能ですが、この場合は、トルネードの特注製作という形になってしまい、相当の高額になってしまいます。
※ 最終的にY様は、標準トルネードの一部改造による導入を決定されました。
Y様から頂いた導入レポートです。
購入よりしばらく経ってしまいましたが、ようやく時間が出来ましたので、
カスタマイズして頂いた変則トルネードの導入レポートです。
使用スピーカーはTANNOY PRECISION8D(アクティブスピーカー)です。
とはいえ、PRECISION8Dも同時の導入であり、
最初からトルネードでセッティングしてしまうとスタンドとしての性能がわかりづらいという事で、
トルネードを使わなかった場合の自分の考えうるセッティングを先に試すことにしました。
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一般的な木製スタンドの上にAuralex MoPadを置き、その上にセッティングしました。
このMoPad、賛否両論で「音が死ぬ」「音が痩せる」という評もよくあるのですが、
個人的には音が全般に渡ってすっきりし、
モニタリングしやすいという事で気に入っています。
このセッティングで聴くと、これはこれでなかなかいい感じでした。
低域もタイトで、中域も立体的に定位し、高域も滑らか。
サイドプレスを知らなければ、これで十分満足していたと思います。
そして、トルネードのセッティングへ変更しました。
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カスタマイズ品という事で志賀様より事前にセッティング写真を頂いた時には不安定かなと少々心配でしたが、
実際にセッティングしてみると、全く杞憂に終わりました。非常に安定しています。
あと、環境を無彩色(主に黒)を基調に揃えているので、実に馴染みが良く、見た目も気に入りました。
音を出してまず「変わった!」と思ったのが、音全体の透過感が上がった事です。
MoPadで除ききれなかった付帯音が除かれたからだと思われます。
といっても必要な音が消えたわけではなく、微量なリバーブなども粒立ち良くしっかり見えます。
それから、各音像の前後感もぐんと増し、EQなどをかける際に凄くわかりやすく感じました。
低域は、量感などはあまり変化はありませんでしたが、
伸びや沈み込みが格段に良くなり、リスニングはもちろんモニタリングでも心地よく聴けます。
タイトさも少し上がりました。前以上に輪郭が見えまくりです。
(ただし少し遠くなったような印象も受けたので、背面のディップスイッチでローを持ち上げました)。
一方で、多くの方が感じられている「左右の音場の広がり」はあまり変化が無かったように思います。
これはスピーカーまでの距離が1m強のニアフィールドに近い環境で、
なおかつ完全に耳の方向に向けている、という状態であり、
もともと見える音場がかなり限られているせいかもしれません。
サイドプレス(トルネード)、リスニングだけでなくモニタリングにも十分有効な事がわかりました。
これからも末永く愛用したいと思います。
素晴らしい製品をカスタマイズまでして頂きありがとうございました。
FAPS感想
写真付きの素晴らしいレポート、ありがとうございました。
無事セッティングもできたようで安心しました。
スピーカーをもう少し外向きにするだけでも、相当に広がりが変わると思います。
リスニングとモニタリングでは、求めるものが少し違うと思うので、好みで決めてよいでしょうね。
安定性については、アクティブタイプのため重さが気になっておりましたが、特に問題ない様子、安心いたしました。