FAPS    Side-Press スピーカースタンド お客様レポート

  都内にお住まいのKS様 (B&W Signature 805)  2005年春 

今回のレポートは、B&W Signature805をお使いになられているKS様から頂いたものです。
試聴の結果、お聞きになるジャンルには不向きということでした。

しかし、お送りいただいたレポートは、大変に素晴らしいものであるため掲載させていただきました。

結論を先に言いますと、Side-Pressは、極めて自然なバランスで広い音場表現をすることが災いし、
お聞きになる音楽くジャンルや、好みにより不向きなケースもあるということです。
Side-Pressをご検討のお客様には、参考になることも多いと思います。

感想文は、ご本人のご了解のもと、原文通りでご紹介させていただきます。

当方の感想は、その後の確認実験の結果に基づく評価に書き直させていただきました。(2005年秋)

お世話になります。KSです。

本日、試聴品届きました。
予定より早い到着、感謝しています。ご無理申し上げました。

さて、早速セッティングをし試聴させて頂きました。(今日が日曜で良かった。)

試聴セット(ケーブル類は省略)

トランスポート CEC TL-1X
アンプ SONY TA-DR1
スピーカー B&W Sig 805
比較スピーカースタンド アコリバ RSS 604

何と言いましょうか、
スピーカーの奥深さを感じずにはいられないスタンドですね。

たまたまセットしてあったアカペラものから聴いてみたのですが、
声のパワー感が全く違う。
伸びやかでまさに解放という表現がピッタリです。

さらには定位感もお見事としか言いようが無いですね。
誰がどこで歌っているかが見えるようです。
左右はもちろん、特質すべきは前後感ですね。

ここまで前後の位置関係を感じられたことは無いです。我家では。
今までは、すべてスタンドに吸収されていたんでしょう。

次に、オーケストラものを聞いて見ました。
実はあまりこの手のジャンルは聴かないのですが、聴かない理由がわかりました。
単純に今までは聴いても気持ちよいとか、綺麗とか、
そう思える音で鳴ったことが無かったからです。

Sig 805 を以ってしてもそうだった訳ですが、
これもスタンドに吸われていたからに他ならなそうです。

目の前に広がるは、ホールそのものです。
どの楽器がどのポジションにいるのか、前後を含めてハッキリイメージできます。
特に弦楽器のボディーが鳴っています的な鳴りは初めて感じました。
これならクラシックも楽しい、美しいと感じられます。

なるほど、これは貸出した側から売れる訳だと思いながら、
一番よく聴く Rock、ポップス系をかけてみました。

・・・ガーン。違う。これは何が違うんだ?

率直な感想です。

で、よくよく考えてみました。

これは CD をホールでかけているみたいだ。
もしくはライブを聴いているような感じだ。

ということに気付きました。

既述のような長所は変わらず存分に発揮されていますが、
逆にそれ故、ホールの中で音がなっているようなのです。

ライブ版であれば最高の鳴り方ですが、
こときっちりとレコーディングされたもの聞くには
あまりに雰囲気が乗りすぎているのです。
目の前で演奏して欲しいのに、なんでそんな広いホールで PA を通して演奏しているの?
みたいな感じです。

また、ホールの雰囲気が強いので、ディテールがスポイルされているようです。
いわゆる情報量というやつでしょうか。

自分と演者の距離も遠いので、
(決して音が後ろにひっこむという意味ではありません。あくまで空間が広くなるのです。)
スピード感というか、キレもいまひとつな感じです。

低域の量感は減っているとは思いませんが、芯が減った感じはあります。
フォーカスがあっていないというか。
(定位的なフォーカスはバッチリですが、密度的な、とでも言いましょうか。)

結論

サイドプレスが醸し出すホール感は、
クラシックや声楽等の雰囲気を演出するにはこの上ないものであると感じました。

一方で、

それ故、瞬発力(特に低域の)や、情報量(テクスチャー的な)は、いまひとつな印象を受けました。

と言う事で、残念ながら私は Rock POPS を聴く、創る側なので、
ちょっと合わないという結論に至りました。

申し訳ありません。明日、ご返却の手配をいたします。

蛇足

とは言うものの、サイドプレス方式には物凄く可能性を感じています。

今回は Sig 805 の後ろの穴を使って固定していますが、
そうではなく、ウファー(?)ユニットの真下で、
それなりの質量を持ったインシュレーターやら、支柱やらで一点支持。

さらにスタンドそのもの剛性(厚みを増やす)
重量を増加させて(充填剤ないしは、材質自体を重いものにする)いったら、
良いとこ取りの最強スタンドが出来上がりそうなんですが、
そんなことはないんですかねぇ。
(いや、それが設計理念に反しているということは存じておりますが。)

やはり、フワッと系のメカニズムで音の芯と情報量とキレをキープするのは
難しいのかなと感じた次第です。

以上です。

FAPS感想 (改)

頂いた感想に対し、当初は音場が広がることの反作用として、
ご指摘いただいたような音が薄くなるような現象もあるのかも知れないと考えていました。

しかし、その後、各種の確認実験を行った結果、
Side−Pressスタンドは、
もともと音源に含まれていた情報を正確に表現しているという確信を持つようになりました。

まず、一般のスタンドでは、想像を超えるスタンドの鳴りが付加されていることが多いようです。

スタンドの鳴りは、主として中音域に影響を与えると同時に、
スタンド付近の中域エネルギーを増やし、力感のある音を出す傾向があります。
強調された中音域がメロディーラインが強調され、
いわゆる「厚い音」「濃い音」「粘る音」と言われるような音を演出することになります。

スタンドの鳴りが多い場合は、聞く音楽ジャンルによっては、効果的に作用することがあるようです。
ロック音楽のようにスピーカ部分を核として炸裂するような音楽を聴きたい場合等に向いているようです。

ただし、このような傾向のスタンドを使って
オーケストラのように多数の音源(奏者)が存在するものを再生した場合は、
明らかに悪影響を与えています。
本来は、ステージ上に均等に存在しているべきものが、スピーカ付近に固まってしまい
正確な音場表現ができなくなっていることが確認できました。

このケースで、最も問題と感じたのは、ソロ楽器や声の表現です。
非現実的な大きさをもった楽器や口が目の前に再生されてしまうわけです。
特に高さ方向の拡大が顕著で、気になりだしたら耐えられない表現になっています。

Side−Pressは、スタンドの鳴りやスピーカー付近での音の集中を減らすために
天板を廃し、スタンド表面積を極端に減らしています。

この効果として、スピーカーから出る音が素直に再生されるようになり、
部分的に強調された音がなくなるため、
バランスのよい自然な感じの再生が実現できているわけです。
点音源を点として表現できることが
広大な音場表現と正確な定位表現を実現しています。

反面、位相管理がなされていない録音(ミックス系に多い)を再生した場合、
聞くに堪えない不快な音場表現となってしまうケースもあるようです。

どちらが良いかは好みの問題ですが、
できるだけ脚色されていないスピーカーの本来の音を聞きたい場合、
あるいは、より正確な表現を求める場合は、
サイドプレスのようにスタンドの鳴りが少ないタイプが向いているということは断言できます。

==== スタンドの構造と鳴りについて ===

スタンド支柱の肉厚を厚くすること、極端な場合は無垢材にすること、
支柱内部に詰め物をすること・・・ いずれも大きな音の変化をもたらします。
実験の結果、重くすればするほど共振が増え、再生時の不要な鳴りが増えます。

スタンドを単体で叩いた時に出る鳴りと、音楽を再生した時に出るスタンドの鳴りは別物です。
単体では鳴かないスタンドが再生時に大きな音を出していることが多いのが現実です。

ちなみに、Side-Pressを持ち上げて単体で叩くと、バケツを叩いたような情けない音がしますが、
再生時には余計な音は出しません。
Side-Press構造によりスピーカーを圧迫保持するわけですが、
圧迫保持力の反力がスタンドを押さえつける方向に作用するのがその理由です。

叩いた時に出る鳴りを殺すためには詰め物が有効ですが、
再生時の音は、音が痩せる方向に作用します。(詰めすぎると音が死にます)
詰め物は、支柱上部のキャップを外すことにより簡単にできますのでお試しください。


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